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スコットランド英語”should”の発音~『THE THICK OF IT』で笑いながらマンツーマン英会話(1)
BBCの大ヒットコメディドラマ『THE THICK OF IT』。最初に見たときはシリアスな政治ドラマかと思ってしまいましたが、内容が分かってくると、これがなかなか笑いが深くて後を引きます。
”thick of it”とは、「気の休まらない不安定な状況」というような意味。無理に笑わそうとするのでなく、人が不安な状況から抜け出そうと苦闘している姿が、実はこんなにも滑稽で、且つ愛すべきものなのかということを教えてくれました。
そしてスコットランドのコメディアン俳優Peter Capaldiさんの機関銃のように飛び出してくる言葉の連打が素晴らしい。swearwordのオンパレードですが、人をひきつけるその言い回しは芸術的と感じてしまうほど。映画『Local Hero』では、若き日のPeter Capaldiさんが、人魚に恋をしてしまうちょっととぼけた若者を演じています。
添付の映像は、Ministry of Social Affairの大臣を勤めるHugh Abbotが、首相の言葉を早とちりしてしまったことが判明した場面。 政府の危機管理及び広報担当のMalcolm Tuckerにその誤りを激しく指摘されます。
Hugh 「首相は”それはまさに我々が行うべき(should)ことである”と発言された」
Malcolm 「”行うべき(should)”というのは、”行う”という意味ではない」
分かりづらい言葉使いをするのは、日本の政治家だけではないようです。
ところで、このshouldの発音について。
イギリス標準英語では
/ʃəd/
のように唇を丸めずに発音します。一方スコットランド英語では
/ʃud/
のように唇を丸めて発音する傾向があるようです。
映像では、shouldを発音する際にHughはあまり唇を丸めずに発音しているのに対して、強調して発音しているため、特にその傾向が強くなっている可能性がありますが、Malcolmは唇を突き出して丸めているのが分かります。
Hugh Abbot: Malcolm!
Malcolm Tucker: What the fuck was that? Was this the whole Snooper Force thing from you?
Hugh Abbot: Malcolm, I’ve talked to the PM and this is completely kosher as far as he’s concerned. He gave the go-ahead and he said, you know, bounce the Treasury.
Malcolm Tucker: Don’t you realise, we have got 17 different issues we are fighting with the Treasury about?
Hugh Abbot: I can hear that you are, as your usual, upset.
Malcolm Tucker: I’ll tell you why I am upset. I’m upset because these fucking morons over at the Treasury, these people, they are so paranoid! If you don’t tell them about stuff like this, if you don’t even cc them on e-mail, they think you’ve started a palace coup!
Hugh Abbot: Malcolm…
Malcolm Tucker: You don’t seem to understand that I am gonna have to mop up a fucking hurricane of piss here from all of these neurotics! What did the Prime Minister actually say to you?
Hugh Abbot: He actually said this is exactly the kind of thing we should be doing.
Malcolm Tucker: What did he actually say?
Hugh Abbot: He said this is exactly the sort of thing we should be doing.
Malcolm Tucker: ‘SHOULD’ be doing. ‘Should’ does not mean ‘yes’.
—
Hugh Abbot: ‘Should’, does it mean ‘yes’?
Glenn Cullen: Yes, “we should do this”.
Hugh Abbot: When Tucker was talking to me ‘should’ didn’t mean ‘yes’. I mean it really didn’t. I felt like a fool.
※参考図書
▽英語音声学音韻論入門 (Philip Carr 著)
※関連サイト
▽The Thick of It IMDb
ジョニー・デップが演じるバリー氏もスコットランド英語~『Finding Neverland』で楽しみならマンツーマン英会話
友人のホーム;パーティで初めてスコットランド人にお会いした時、ある衝撃を覚えました。
自己紹介で、”I am from UK.”と言わずに、”I am from Scotland”と言ったことでした。その当時の僕にはとても新鮮でした。ETCマンツーマン英会話のチャールズ先生いわく、このような言い方は、スコットランド人の独立心の表れとのことでした。
そして、その方のスコットランド英語が全くわからなかったことも、その後に受けたもうひとつの衝撃でした。以来スコットランドにとても興味を持つようになったのです。
最近、「この方もスコットランド人だったのか」と、あらためて気づくことがよくあります。日本語の情報の多くが、スコットランド人としてではなく、イギリス人として紹介されている場合が多いからです。出生地を調べて、初めてその方がスコットランド人だとわかります。
『ピーターパン』の作者であるジェームス・マシュー・バリーさんもその一人です。バリーさんのピーターパン物語が生まれるまでのエピソードを描いた『Finding Neverland (ネバーランド)』という映画があります。バリーさんを演じたのはジョニー・デップさんです。彼はがこの映画でもスコットランド英語を披露しています。
例えば、スコットランド英語では二重母音の/eɪ/が下記のように変化します。
/eɪ/ ⇒ /e/
greatは、スコットランド英語では敢えてカタカナで書くと「グリート」のように聞こえます。
また、イギリス標準英語はnon-rhotic(ノン・ロウティック) なのに対して、スコットランド英語はrhoticです。たとえば、bearは、イギリス標準英語では
/beə/
と、rの綴りがあっても発音しませんが、スコットランド英語では
/be:r/
となりrを発音します。
『Finding Neverland』の予告編を見てみましょう。公園でバリーさんが、大きな犬と踊るシーンに注目してください。「これはただの犬なんかじゃない。ちょっと想像力を使うだけで、僕には大きな熊(great bear)に見える」と言っている部分です。「グリート・ベーアr」と言っているように聞こえませんか。
… with just a wee bit of imagination, I can see the great bear.
”a wee”はスコッツ語で、”a little”という意味です。
※参考図書
▽『英語音声学音韻論入門』 (Philip Carr 著)
※参考リンク
▽Scottish Online Dictionary
※関連ブログ
▽『ケジントン公園のピーター・パン』 - BiblioMania雪見
▽関連ブログ
イギリス国旗とその成り立ち
ジョニー・デップが演じるマッド・ハターはスコットランド英語~『Alice In Wonderland』で楽しみならマンツーマン英会話
映画『Alice In Wonderland』のでジョニー・デップさんが演じたマッド・ハターは、昔を回想する時、怒りがこみ上げた時、勇気を奮い立たせようとした時に、スコットランド訛りになります。内面から何か強い感情がこみ上げる時に、話し方が変わるのです。
例えば、これはチェシャー猫にマッド・ハターが怒りを爆発させるシーンです。後半は悪い言葉の連続のようですが。「」内は日本語吹き替え。
- チェシャー猫
What happened that day was not my fault.
「あの日のことは俺のせいじゃない」
– マッド・ハッター
You ran out on them to save your own skin,
you guddler’s scuttish pilgar lickering schum juggling sluking urpal.
Bar lom muck egg brimmi!
「自分かわいさのために仲間を捨てたんだろうが。
この根性なしで、卑怯で、見下げはてたすっとどっこいの裏切り者が!恥知れ!」
ぜひ、本編で確認してみてください。この動画は予告編です。
心の内側からあふれ出る言葉にはスコットランド訛りを使用するとは、とても興味深いです。スコットランドの言葉は欧米の人々にはどのような印象で響いているのでしょうか。次回のレッスンで、ETCマンツーマン英会話のチャールズ先生に質問をしてみようと思います。
ジョニー・デップさんは、『ネバーランド』でも東スコットランド、アバディーン地方出身者のジェームス・マシュー・バリーさん(『ピーターパン』の作者として有名)の役を演じていました。ジョニー・さん自身は、グラスゴー訛りに興味があったそうです。理由は「なんだか危険な香りがするから」とか。アクセントはスコットランドコメディの『Rab C Nesbitt』を参考にしたそうです。
『Alice In Wonderland』を題材に、ETCマンツーマン英会話のダイアン先生のレッスンを受けています。ぽっどキャスティングRadioETCで配信中です。こちらも、どうぞお楽しみください。
※参考リンク
▽Glossary of Terms For Tim Burton’s Alice in Wonderland
▽ジョニー・デップ インタビュー