英語落語で学ぶ日本人の本音と建前

I can teach you a way to sound professional in Japanese without learning one single word of Japanese. If someone is pouring your sake, you say “ottottottotto”.

「日本語を一言も学ぶことなく、プロフェッショナルに聞こえる日本語をお教えしましょう。お酒を注がれた時にこう言う『おっとっとっと』」

 落語家・桂三輝(かつらさんしゃいん/本名:Gregory Robic)さんは1970年カナダ生まれ。トロント大学で古典演劇を専攻し、大学院在学中に劇作家・作曲家として制作した初のミュージカル作品「Clouds」がトロントの劇場で15か月間のロングラン。ギリシア古典が日本の能楽/歌舞伎に似ている点があるという論文を読んで、日本に興味を持つようになりました。

 1999年、来日と同時に日本に一目ぼれ、この国に居続けることを決めました。初めて訪れた夜の新宿は、ハリソン・フォード主演の映画『ブレードランナー』で描かれた近未来都市日本を、現実に見せられたような感動だったそうです。

 驚いたのは、通りの角をひとつ曲がった時のことでした。そこにはぎゅうぎゅう詰めの建物が並んでいて、呉服屋さんや着物屋があり、百歳はいっているであろう老齢の女性が、江戸時代から続く長いキセルを吸いながら接客をしていました。

And so the seamlessness and like effortlessness. It was the most moving thing to see modern and classic things coexist together at the same time!

そのシームレスさ(近代的なビルから江戸時代創業の呉服屋まで、通りひとつで繋がる街並みの変化、そしてその両方で生きている人々の姿)には無理がありませんでした。近代的なものと古典的なものが無理なく共存していることに一番感動しました。

※「海外で大人気のカルチャーショック落語が面白すぎたw」(MrFuji from Japan)より

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[語註]
seamlessness つなぎ目がないこと
effortlessness 努力しないこと、無理のないこと
moving 感動させる
coexist (同一場所に)同時に存在する、(…と)共存する

 来日から5年後に落語と出会い、「このために生まれてきた!」と感じるほどの衝撃を受けたそうです。2008年、桂三枝(現:六代桂文枝)に弟子入りし桂三輝と命名されました。

 これまで世界30カ国以上で公演を行い、現在も海外では毎月ニューヨークのプロ―ドウェイで寄席を開いていて、今年で6年目になるそうです。東京でも月一で浅草の木馬亭に出演し、英語で落語を演じています。

 三輝さんのお話の面白いところは、日本で暮らす私たちが気がづいていない日本の文化の形を、三輝さんの視点で掘り下げて解説した上で、それを笑いに変えるところです。
 

When you pour wine, it’s half a glass or maybe a third of a glass of wine is the way it’s mostly poured, right? But with sake, it should be poured to the top.

ワインをそそぐときには、グラスの半分くらいまで、もしくは3分の1位までというのが大体の適量だよね。でもお酒の場合はてっぺんまで。

In fact, this is what I’ve noticed about Japan. It is so precise and detailed and the spirit of “Kiwameru”. Taking a skill to the very edge of your possible expertise is “Kiwameru”.

実は、これが私が日本で気づいたことのひとつなんです。それは、ものすごく正確で繊細な「極める」という精神の話し。「極める」というのは自分の能力を可能な限り磨き上げるということ。

Even pouring sake contains “Kiwameru” because it’s poured to the top. Not just to the top, but the surface tension of the liquid causes it to go over the top without spilling. That’s a perfect cup of sake

お酒を注ぐことにだって「極める」ことが存在する。なんたっててっぺんまで注ぐからね。しかもただのてっぺんじゃない。表面張力によって酒が溢れることなく最大限までピタピタに注がれた状態。それが完璧な酒一杯なんだ

[語註]
pour 注ぐ、つぐ
surface tension 表面張力
spill こぼす、漏らす

 他方、注意しなければならないのは、外国人が酒を注いでいるときに「おっとっと」と言われると「もう止めて」と言っているように聞こえてしまうこと。相手が真剣に言っているように見える場合は特にそう聞こえてしまいます。

 それでも「Do not stop!(止めてはだめ!)」と三輝さんはアドバイスします。さもなくば「なんであの外国人はけちけち酒を注ぐんだ!?」と思われてしまうから。

 そこには日本独特のこんなコミュニケーション方法が隠れていました。

This is the way you think about Japanese communication. There’s two modes: “hon-ne” and “tatemae”. Hon-ne is what you feel in your heart. Tatemae is what you say for social situations. Most of the time, same thing. Say what you think. No problem.

日本人のコミュニケーションについてはこう考えるんです。「本音」と「建前」 という二つのモードがあると。「本音」は心の底から思っていること。「建前」は社交的状況を気にした結果発する言葉。大体の場合それら二つは同じだから、思ったことを言うだけで問題なし。

But sometimes you have to separate the two. So if you hear someone, you’re pouring sake, and they say “ottottottotto”, it sounds like they’re saying “no, no, no, no, no”.

でも、時にこの二つを使い分けなければ、いけないことがあります。だから、こちらがお酒を注いでいる時に相手から「おっとっと」と言われると、それはまるで「ノーノ―ノー」に聞こえる。

But what they’re really saying is “Go, go, go, go”.

でも本当に心で思っていることは、 “Go, go, go, go(もっと, もっと、もっと、もっと)”

 三輝さんの次の目標は、世界5大言語で落語ができるようになりたいというもの。フランス語での落語はパリなどで去年、一昨年おこなったとのこと。インドでも落語をやりたいので、現在ヒンディー語を毎日勉強中で、中国語は3,4年前から勉強しているとのこと。スペイン語での落語もどこかで実現したいそうです。

 日本の伝統的なお笑いが、三輝さんを発信源にして世界中に広がっていくのはそう遠い未来ではないかもしれません。

 文化的背景や言語が異なる人々と英語を通して笑顔になれる。英会話を学ぶ一つの目標とされているかたもいらっしゃるのではないでしょうか。

 笑いだけでなく英語、そして日本文化の勉強にもなる三輝さんのお話をぜひお楽しみください。

※桂三輝さんWebSite

(*)参照リンク (MrFuji from Japan)
※日本を愛した外国人落語家、桂三輝(サンシャイン)の人生!

※海外で大人気のカルチャーショック落語が面白すぎたw

 
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