ロンドンタクシードライバーの脳内カーナビ The Knowledge (1979)

SherlockBBCPoster あの名探偵シャーロック・ホームズを130年後の現代に甦らせたのがBBCのテレビ番組SHERLOCK。愛用のパイプを燻らしていたホームズは、現代ではその効果が不透明な禁煙パッドで喫煙の誘惑に苦しむ姿となり、電報局から送られていた電報はeメールに、ホームズの足となりロンドン中を駆け回る辻馬車はタクシーに変わっていました。

 一方、ワトソンは130年たった現代版でも、アフガンの戦場から負傷して帰還した元軍医。この世界は、一体いつまで戦争を続けているのかと訴えずにはいられません。

 そうしてもう一つ変わっていないのは「辻馬車」と「タクシー」の呼び名。どちらも英語では「cab」。元々「cab」は「cabriolet」(キャブリオレー)の短縮形。馬に引かせる幌のついた客車のことを指していました。

 『SHERLOCK』の第一回目は「Study In Pink」(ピンク色の研究)は、アーサー・コナンドイルのシャーロック・ホームズ・シリーズの長編作の一つ「Study In Scarlet」(緋色の研究)が原案になっています。事件の鍵を握るのは、原書では御者家業の男、そして現代版ではタクシードライバーです。

London_taxi 『SHERLOCK』では、猛スピードで逃走するタクシーをホームズとワトソンの2人が、生身で走って追いついてしまうというシーンがあります。ホームズのカーナビを超える記憶力は、複雑なロンドンの通りどころか、街中のビルを屋根から屋根へと飛び移ってゆくルートまで把握。最後にはタクシーより早く目的地に着いてしまうのです。

 さて、ここで『SHERLOCK』をもっと楽しむための基礎知識を。

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 先ほど、「ホームズのカーナビを超える記憶力」と書きましたが、ロンドンのタクシードライバーの記憶力も実は相当なものであるということです。

 実はロンドンでタクシードライバーの免許を取得するには大変厳しい資格試験に通らなければなりません。「ノリッジ試験」(The knowledge)といって、取得するまでには平均34ヶ月も要するそうです。

ETCマンツーマン英会話 ロンドンの半径6マイル(約9.65km)内にあるホテル、病院、デパート、ショップ、公官庁ビル、劇場、映画館、レストラン、公園内にある美術館、教会、モスク、等々をビル名と共に、受験者はすべて記憶しなければなりません。

 この試験においてバイブルと呼ばれているブルー・ブック(実際はピンク色)に記載されている起点から終点までを示した468のルート、約15,842の通りをすべて頭に叩き込む必要があります。

 覚え方は、スクーターに乗って実際に自分で街中をひたすら走ること。これらのルートのどの基点からどの終点を指摘されても、受験者は目印となる建物を上げながら、その最短ルートを空で答えなければなりません。

 さらに、この試験で試されるのは記憶力だけでなく、受験者の性格や人間性にまで及ぶそうです。試験官は、時に高圧的な態度をとったり、タクシーの走行とは全く関係のない質問をして動揺を誘ったり、受験者の回答中にわざと集中力をそぐような態度をとったり、正確な解答をしているのに、間違っていると怒鳴ったり。しかし、そのような理不尽な対応をされても、受験者が冷静に対応できるかどうかをテストしているようです。

 1979のテレビドラマ『The Knowledge』は、この試験合格を目指す4名の受験者の体験と人生を描いています。次の動画は口答試験のシーン。ロンドンのタクシードライバーがどれほど厳しい試験を通った選りすぐりの人材であることがこのドラマを見ると理解できるかもしれません。

 試験官は勝手に椅子を移動した受験者に、「君は引越し屋か?椅子を元にあった場所に戻しなさい」と、いきなり高圧的な態度をしめします。そして、タクシーの走行とは全く関係のないこんな質問から始まります。

 What do you think about the American fertility, Mr. Weller?
 (アメリカ人の繁殖力についてどう思うかね、ウエラさん?)

 「俺はノレッジ試験を受けに来たんだ?」と怒る受験者に、試験官が取った態度は。。。

 さて、果たして4人の内、めでたくタクシードライバーの免許を取得できるのは一体何人でしょう?

 現代に甦ったホームズが凄いのは、こんなにも厳しい試験をパスしたタクシードライバーよりも、さらに詳細なロンドンの近道(ビルの屋上を飛び移るルートも含む)を記憶していること。

 技術革新によって、パソコンやスマートフォン等、たくさんの便利な道具に囲まれて生活をしている私たちですが、現代に生まれ変わったホームズは、そんなツールよりもさらに能力を研ぎ澄ましていたのでした。

(*)関連リンク 『Sherlock』題材にしたポッドキャスティングRadioETC

人名に“the”を付ける意味は
“off out”の意味は?
“out of the depth”の意味は?
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“It could be”の意味は?
“hang on”の意味は?
“hung up”の意味は?
“filling in”の意味は?
“I’m desperate”の意味は
コックニーの”h-dropping”とは?
コックニーのglottal stopとは?

(*)参照リンク
ロンドンタクシー調査報告
The Knowledge (1979)

 

 
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