映画『Divorcing Jack』(ディボーシング・ジャック)でアイルランド英語
アイルランドの英語に触れてみようと、アイルランドに纏わる映画を観続けています。しかし、そのような映画を楽しむためには、アイルランド英語以前にアイルランドの歴史と、その歴史の中で生まれた文化を学ばなければ、本当の意味でアイルランドの映画を楽しめないことに気がつきました。
もっと言うなら、言葉はその国の歴史や文化と切って切り離せないもの。言葉を学ぶことイコール、歴史と文化を学ぶことなのかもしれません。そして、気になったことは徹底的に掘り下げて学んでみる。そうすることで、自分自身の世界が広まり、人生が豊かになるに違いありません。
それにしてもアイルランドの歴史は難しい。彼らの歴史を難しくしている理由はどのようなところにあるのでしょうか。書籍『IRA アイルランド共和国』 (鈴木良平 著)に次のような記述がありました。
アイルランドは英国によって北アイルランドと南のアイルランド共和国とに分断されている。とりわけ北アイルランドは、英本土から分離した国家であると同時に、アイルランド本土の大半を占める南アイルランド共和国からも分離されている。英本土からの入植者のプロテスタント系市民は、英本土の文化の発展からも分離されており、土着のカトリック系市民は、北アイルランドという国家体制内に生存しているが故に、南アイルランドから分離されている。
(中略)
そして、一つの国家の中にカトリックとプロテスタントという二つの宗派、そしてそれにもとづく二つの文化が混在するという点では、アイルランドは複合社会なのである。
(*)書籍『IRA アイルランド共和国』 (鈴木良平 著)より抜粋
映画『Divorcing Jack』の舞台は北アイルランドのベルファスト。主人公のスターキーはこの町の生まれ、プロテスタントの家庭で育ちました。仕事はフリーの新聞記者、コラムニスト。アメリカから市長選挙を取材に来たチャーリー・パーカーのアテンドをしています。ウィスキーを味わうために二人でバーに。目的は、ブッシュ・ウィスキーとブラック・ブッシュ・ウィスキーの違いを理解するためだとのこと。「やっぱりアイルランドで飲むウィスキーは違うな」とチャーリーが行ったところ、スターキーは次のような忠告をします。
It tastes better in Ireland.
アイルランドで飲むウイスキーはうまい
Starkey:
It’s Northern Ireland to you.
ここは北アイルランドだ。
Or Ulster, if you’re a Protestant.
プロテスタントにはアルスターだ。
Six Countries or the North of Ireland if you’re a Catholic.
“北部6県”かアイルランド北部がカトリックの呼び方だ。
And if you’re the British government you call it the Province.
イギリス政府はプロビンスとか呼んでいる。
Parker:
And what do you call it. Mr. Starkey?
それじゃあ君はなんて呼ぶんだ。
Starkey:
I call it home.
故郷だよ。
しかし、もともと原作では次のようなになっていました。より政治的意味合いが濃い表現だと思います。
いろいろな呼び方を聞くだろうが、ここでは北アイルランドと呼ぶことだ。
If you’re a Loyalist you’ll call it Ulster, if you’re a Nationalist you’ll call it the North of Ireland or the Six Countries, if you’re the British Government you call it the Province.
もしロイヤリストならアルスター、ナショナリストならアイルランド北部か北部六県、英国政府ならプロビンスと呼んでいる。
(*)『ジャックと離婚』
(コリン・ベイトマン著)原書より
出生や宗教、立場が異なると地域の呼び名が変わる。しかも、同じ場所を異なった名前で呼ぶ人々が隣り合わせて暮らす社会。北アイルランドの複雑さを少し感じていただけたでしょうか。
※Divorcing Jack (1998) – FULL MOVIE 480p (ENG and PT-BR subtitles)
https://youtu.be/ZulK301CQYE?si=YUCNNRCFxDH5RkEl