映画『Head In The Clouds』(トリコロールに燃えて)でアイルランド英語
ピーター先生(小岩)に、生まれ故郷の思い出についてお訪ねしたところ、次のような答えが返ってきました。
「それは難しいのです。私は今までに21カ国で暮してきました。生れはテキサス州のエルパソ、でも、そこには3日しかおらず、メキシコに行きました。そして3歳のときにイングランドに越しました。そして4歳の時にスコットランドへ。その後アイスランドに住み、英語を学ぶために、オーストラリアに行きました。当時英語が話せなかったのです。オーストラリアで10ヶ月過ごした後、ハワイに越し、一年間住みました。父の仕事の関係でたくさんの国に住みました。フィリピン、マレーシア、シンガポール、ベトナム、インド、パキスタン、南アフリカなど。ですから、生まれ故郷についてお話しするのは難しいのです。」
映画の主人公Guyも、幼少の頃に移住を体験しました。アイルランド共和国のダブリンからイギリスの統治下となった北アイルランドへと。次の場面は1933年のイギリス。Guyはケンブリッジ大学の1年生。19歳だとすると、英愛条約が締結された1922年の時は8歳。その時に父を紛争で亡くしたことになります。
Gilda
Where are you from?
出身は?
Guy
Dublin originally. We moved up north after the Treaty.
ダブリンだけど、英愛条約後は北部へ移った
Gilda
Why was that?
どうして?
Guy
My father was a policeman. And he was killed during the Troubles.
親父が警官で、その時の紛争で殺されたんだ
Gilda
So are you British or Irish?
で、あなたは英国人、それともアイルランド人なの?
Guy
On paper, I’m British. But I don’t believe in countries much.
書類上はイギリス人。でも、国のことはあまり信じてない
Gilda
Nor do I.
私もそうよ
そんなアイデンティティをもっていたGuyですが、スペイン内戦では政府軍側を支援する立場で戦場に赴きます。
Gilda
What’s wrong?
どうしたの
Guy
Things are getting worse in Spain. There are friends of mine there now.
スペインの情勢が悪化している。あそこには友達がいるんだ。
Gilda
And you want to go get yourself killed, too, in someone else’s war?
自分から命を落としに行くわけ。他人の戦争なのに。
Guy
It’s not someone else’s war. It’s as much ours as if it was happening here. We all share the same world.
他人の戦争じゃない。僕たちの戦争でもあるんだ。世界は一つなんだよ。
そして、GuyもGuildaも戦争に巻き込まれてゆきます。すべては、自らが信じる戦争の大義ために。映画の原題”Head in the clouds”は空想。その大義こそがただの空想なのかもしれません。
▽Head In The Clouds Trailer
Guyを演じたスチュアート・タウンゼント(Stuart Townsend)は、役造りの為に脚本を読み込むのはもちろんのこと、スペイン内戦に関しても書物を読みあさったとのこと。その一つにジョージ・オーウェルの『カタロニア讃歌』を上げていました。スペイン内戦の大義とはなんであったのか目を通しておきたい書籍の一つです。