スコットランド英語”about”の発音~映画『Gosford Park』でじっくりとマンツーマン英会話(2)
「コックニーはイギリスの労働者階級の英語」と聞いた時に、すんなりと理解することができませんでした。
では、労働せずに暮している人々がいるのだろうか、労働していない人々とは一体どのような人々なのだろうか、働いているけどコックニー英語を話さない人々はいったい何と呼ばれているのか、と次々と疑問が湧いてきたからです。
『クラース イギリス人の階級』(ジリー・クーパー著)の中に、次のような記述がありました。 「私は、階級は何に似ているかといえば、洗いざらしのラグビー・シャツの大きな縞模様のようなものだ、と思う。つまり、ラグビー・シャツの何本もの横縞がそれぞれ上下に隣り合った縞に色をにじませて、縞の境界がはっきりしなくなる。ところが、そのように階級も上下の別が判然としなくなったところにいる人びとこそ、自分より上の階層とつきあいがあるのだ、と鼻にかけるのだ。」
つまり、今は階層ごとの違いがあいまいになってきているが、イギリス社会を俯瞰して見るとラグビー・シャツの縞模倣のように、やはりそこにはくっきりと階層が存在している、とうことでしょうか。
映画『Gosford Park(ゴスフォードパーク)』が描いているのは1932年の秋。新品のラグビーシャツのように、階上の人と階下の人が、はっきりと階層で分けられていた時代です。ヘンリー・デントンは実はアメリカ人の俳優。しかし、スコットランド人の召使のふりをして、スコットランド訛りの英語を話しています。でも、彼のスコットランド訛りはおかしいと、すぐにまわりの召使から怪しがられます。
この映像は、ヘンリーが怪しげなスコットランド訛りでまわりを欺こうとしているシーンです。
スコットランド英語では、二重母音の/əʊ/が次のように変化するようです。
/əʊ/ ⇒ /u/
たとえば、
about [əˈbaʊt]
が、
about [əˈbut]
のように変わって聞こえます。敢えてカタカナで書くと「アブゥト」のように聞こえます。
えっ?聞こえない。だから、ヘンリーはスコットランド人ではないと、すぐにばれてしまうのかもしれませんね。
▽『Gosford Park』予告編
- You’d find it a lot easier to clean them if you put the trees in first
(木型を入れて磨くんだよ).
- I was just about to do that.
(そうしようと思ってた)
”be just about to do”は、「…するところだ」という意味です。
さて、ヘンリーはなぜスコットランド人の召使のふりをする必要があったのでしょうか。イギリスの階級社会を理解するのにもお奨めの映画です。ぜひご覧になってください。
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※参考図書
▽英語音声学音韻論入門 (Philip Carr 著)
▽クラース イギリス人の階層 (ジリー・クーパー 著)