映画『Waitress』(ウェイトレス 〜おいしい人生のつくりかた)で南部アメリカ英語マンツーマンレッスン
アメリカ南部はパイが大好き。日本のクリスマスのデザートは圧倒的にケーキですが、アメリカではケーキの他にかなりの確立でパイも登場するとのこと。南部の伝統的なパイ生地はバターではなく、ショートニング(植物油を原料とした食物油脂)やラードを使います。ヨーロッパタイプのような時間や手間のかかかるタイプではなく、材料を混ぜて伸ばすだけ。映画『Waitress』の副題、”If only life were as easy as pie.”も、アメリカのパイのそんな調理の手軽さ背景にあるのかもしれません。
アメリカの南部をテーマにした映画には、おいしそうな料理がよく登場します。アメリカ南部の英語が、実は黒人英語の影響を強く受けていたように、料理にも同じような影響があるのかもしれません。彼らの料理は”ソールフード”とも言われ、その原点は奴隷制の時代に白人達が食べずに捨てていた動物の肉などを黒人奴隷たちが工夫して上手にしていたものにあります。
手にすることができた貧しい食材を工夫、少し発酵して酸っぱくなった牛乳、家畜の内臓、油なども無駄にしません。どんな食材も捨てるところはできるだけ少なくして料理に使っていました。ディープサウス(アラバマ、ジョージア、サウスカロライナ、フロリダ北部、ルイジアナ北部、テキサスの一部など)に住む人々の台所には、必ずベーコンを焼いたときにでる脂を貯めておくポットが、ガス台の近くに置いてあり、お母さんの料理の隠し味になっていたそうです。
映画『Waitress』の舞台は南部アメリカ(でも、実際に撮影が行われたのはカリフォルニア州。ロサンゼルスの北西部にあるサンタクラリタ、ソーガス。The Halfway House Cafeというレストランを使用したとのこと。) 母音を長く引き伸ばすsouthern drawlが随所に聞かれます。例えば次のような台詞。”fun”が[ファーン]と長く引き伸ばされています。
▽『Waitress』予告編
I’m having me a little adventure after many years of lots of nothing.
Something fun and sneaky and sexy.
(平凡な生活を送ったあとの、私の小さな冒険よ。楽しくて秘密めいてい色っぽい。)
ちなみに、この監督で映画の中では自らドーン役を演じていたエイドリアン・シェリーは、この作品を発表した同じ年の2006年に殺人事件で命を落としています。ご冥福をお祈りします。
(*)参照図書
アンドレさんのゴスペル料理帳 (アンドレ・レイノルズ 著)