原書『SONGLINE』(ソングライン、ブルース・チャトウィン著)でマンツーマン英会話~アボリジニに伝わるその土地の物語
ふとしたきっかけで、ある人のことが心に残り、その人のことを深く知りたくなることがあります。
彼らがどう死んでいったのかというエピソードは、彼らがどう生きていたのかという興味に変わり、彼らが愛した場所を訪ね、彼らが旅をした風景を見て、彼らの息遣いに自分自身の呼吸を重ね合わせ、彼らの心を感じてみたくなるのです。この世に遺して行っていった彼らの想いがそうさせているのかもしれない、とさえ思うことがあります。
そして、僕は今ブルース・チャトウインという人に出会ってしまったのです。
僕は彼の遺作である『The Songlines』を、原書(翻訳本は絶版)(*)で読んでいくことにしました。 日本語訳をサポートしてくれるのは、ETC英会話のカーラ先生。
他界する二年前に、ブルースが旅したオーストラリア。彼が『Songlines』に書き残してくれた足跡を、僕が辿って行く。 その過程をここに書き溜めて行きます。
『ソングライン』の21章。いよいよ、一緒に旅をしていたオーストラリアの先住民アボリジニが、ブルースのために初めて歌います。ブルースはアボリジニ伝わるソングラインの意味をより深く理解し始めます。
この章は、他の章以上に本当に美しいのです。たった一つの単語、たった一文で、その時の人の心のありようが伝わってきます。
カーラ先生(英語個人レッスンの先生)も共感。
「表現がとても豊富で奥深いのよね。どうしてこんな文章を書けるのか、
ジェラシーさえ感じるわ。」(カーラ先生)
この章は、アボリジニのソングラインを理解するのに、とても重要な章だと思うので、しばらく、こじっくりと訳して行くことにしますね。(チャットウインのような美しい言葉に近づくように、日本語で置き換えられるかどうかの訓練ですね。)
We cleared up and went to join the old men’s circle. The firelight lapped their faces. The moon came up. We could just discern the profile of the hill.
We sat in silence until Arkady, judging the moment, turned to Alan and asked quietly, in English, “So what’s the story of this place, old man?”
僕たちは後片付けをした後、長老たちの輪の中に加わった。キャンプの炎は皆の顔を照らしていた。月が昇り、丘の輪郭を確認することができた。
僕たちは黙って座っていた。そのタイミングを待っていたんだ。アルカディはアランの方に身体を向きなおし静かに英語でこう訊ねた。
「長老、話してくれないか。この場所にはどんな物語があるんだい?」
『The Songlines』(105ページ)
アルカディ(ロシア人)は、流暢なアボリジニの言葉で彼らとコミュニケーションをすることができます。
アルカディが、アボリジニに伝わるその土地の物語(歌)について、英語で訊ねたのは、また、そのことをブルースが敢えて(asked in English)とここに書いたのは、アルカディが、これから始まる彼らの儀式を、ブルースも理解できるように、そして、そのアルカディの心遣いをブルースが確かに感じたからですね。
アルカディとブルースの間に信頼と共感が生まれ、互いに心が通じあい始めたのを感じます。
(*)2006年当時は絶版でしたが、2009年に新訳本『ソングライン』(北田 絵里子 訳) が出版されました。
(*)TokyoPros.ブログ『The Songlines/ソングライン』を旅する』2006年1月27日より転載