大谷翔平選手の通訳・水原一平さんが人気の理由
From conditioning coach and throwing partner to confidant and cook, a baseball interpreter’s job extends far beyond its literal description.
(コンディショニングコーチやキャッチボールの相手からはじまり、親友、そして料理人にいたるまで。野球の通訳の仕事は、「通訳」という言葉の定義をはるかに超えている}
米国のプロ野球リーグ、MLB(Major League Baseball)で活躍する外国人選手の数は、全体の28%以上。その多くがスペイン語、日本語、韓国語、ベトナム語、中国語など、英語以外のコミュニケーションを望んでいいるとのこと。彼らの通訳の働きに関心が注がれています。
‘A Game of Speech’—But Also, For Baseball Interpreters, So Much More
(「言葉のゲーム」―しかし、野球の通訳者にとっては、それだけではない)
(JUN 21, 2021、SPORTS ILLUSTRATED)
野球の通訳者には、語学能力だけでなく、野球の技術や戦術に関するきめ細やかなニュアンスも理解できる高い専門性が求められます。
また、球場を離れた外国人選手が、異国の文化に慣れ親しみ、快適な日常生活が送れるように、また心地よく球場に足を踏み入れることができるように、そのサポートにも気を配る必要があります。
彼らは通訳という言葉から想像される仕事の枠を、はるかに超えた役割を担っているのです。
11月22日ロサンゼルス・エンゼルス球団は、大谷翔平選手の専属通訳である水原一平さんを、「MVI」(Most Valuable Interpreter : 最優秀通訳)としてツイッターで称えました。
そこには「一番助けてくれた人は?」という記者の質問に答えた大谷選手の言葉が添えられていました。
I’m getting the most help from Ippei-san.
(一番お世話になっているのは一平さんです)
水原さんは1984年生まれ、北海道苫小牧市出身。6歳の時に、お父様の仕事の関係で米国ロスアンゼルス市に移住。高校までサッカー部とバスケットボール部に所属。野茂英雄選手のロスアンゼルス・ドジャースでの活躍がきっかけとなり、MLBに没頭。2010年にボストン・レッドソックスの岡島秀樹選手の専属通訳となりました。
2012年からは日本ハムファイターズの球団通訳に。外国人選手の通訳や生活のサポートを務めました。2017年に大谷選手がエンゼルスへ移籍したことに伴い、大谷の専属通訳として水原さんもエンゼルスに所属しました。
ピッチャーとバッターの両方をこなす大谷選手。その特異なポジションから、トレーニングやミーティングにおいても、他の選手とは異なるスケジュールとなることが多く、その管理も複雑。水原さんは、そんな大谷選手を公私にわたりサポートしていることで知られています。
大谷選手がエンジェルスに移籍した最初の年には、クラブハウスで彼が孤立しないように、他の選手が遊んでいる携帯ゲームをダウンロードするように薦め、うちとけるきっかけを作ったことも。キャッチボールの相手をすることもあり、運転手も務めています。
また、大谷選手は2018年と2019年に2回にわたり手術を行っていますが、術後ほとんど動くことのできなかった彼のために、水原さんは食料品の買い出しも行っていたそうです。
興味深いのは、エンジェルズファンはもちろんですが、テレビのインタビュアーなどから、水原さんがとても好かれてると感じられることです。
冗談も交えてですが、野球解説者マーク・グビザさん(Mark Gubicza)によるインタビューでは、水原さんの髪型について質問が飛んでいます。
You’re very popular around everyone’s digging your haircut over there.
How many people now say they want to have the Ippei haircut?
I’m going to give it a shot at some point.
君の髪型は周りからも好評だよ
今、何人の人がIppeiの髪型にしたいと言っていますか?
僕もいつか試したいと思っています。
▽Ippei Mizuhara, Shohei Ohtani’s translator, surprised with ShoTime’s success
そして、今度は水原さんのベースボール・カードができたといって、はしゃいでいるグビザさん。でも、そこにはなぜか水原さんの髪型を模したグビザさんの写真も。
▽Gubie Tuesdays: Ippei Mizuhara gets his rookie cards
2021年MLBオールスターゲームで、大谷選手がホームラン競争に出場した際には、水原さんは捕手を務めました。ほとんど野球経験のない水原さんを抜擢した理由について、大谷選手は次のように語り、皆の笑いを誘っています。(英文は水原さんの通訳のため、him(彼=大谷選手)となっています。)
Intereseted in havng someone that’s more norvous than him right behind him.
後ろに僕より緊張している人がいた方が楽かな、と思って
水原さんの魅力は、正直で飾らない性格にあるのかもしれません。人との垣根を低く感じさせ、相手に不要な緊張感を与えることなく、打ち解けやすい雰囲気を感じます。水原さんのこの人柄が、彼の人間力でもあり、プロスポーツに必要とされる高度な意思疎通を助けているのかもしれません。
自動翻訳などAIによる便利な機能がどんどん発達する中、各々がこの人間力に気づき、育むことが、ますます重要になってくるのかもしれません。
◎関連リンク
野球について英語で会話をしたい方は、喜多見駅から12分の新居に移られたミッチェル先生がお薦めです。少年野球の監督経験もあり、日本でなかなか味わうことのできない、北米の野球文化についても触れることがるかもしれません。
▽ミッチェル先生インタビュー
下記の動画では水原さんの通訳英語を詳しく解説しています。通訳においていらない情報は端折り、必要な情報はちょい足しするなど。逐語訳とは異なる水原さんの実践的な通訳英語を理解することができます。
▽大谷翔平選手の通訳:水原一平「バッサリ術」&「ちょい足しテクニック」徹底解説
(MPB野球英語解説チャンネル)