料理で英語

 夏到来間近。蒸し暑い日が続いています。体調管理に気を配り、栄養のバランスを意識しながら、食事もしっかりと取ってゆきましょう。

 さて、この料理にまつわる英語は、意外に難しいようです。和食の料理方法を、日本のことを良く知らない外国人の方に伝えようとして、苦労された方も多いのではないでしょうか。

 「食」はその国の生活や文化、歴史などと密接に関係しています。その背景をよく知らない人には、調理方法もわかりずらい面があるかもしれません。

 食材の切り方にしても、「くし切り」「拍子木(ひょうしぎ)切り」「せん(繊/千)切り」「糸切り」「乱切り」「かつらむき」など、日本固有と思われる表現がたくさんあります。

 「くし切り」とは、玉ねぎやトマト、レモンなど、球形の材料を縦に放射状に切る切り方。これが「くし」の形に似ていることからこのような呼び方をします。「くし」といっても「ヘアブラシ」ではなく、柄の部分が少し丸みを帯びていて髪飾りにも用いられる「和櫛(わぐし)」の形ですね。

 このような切り方は英語で、

~ cut into wedges

と言うそうです。”wedge”は「くさび(楔)」のこと。「くさび」は堅い木材や金属で作られたV字形または三角形の道具。一端は厚く、もう一端に向かってだんだん薄くなる形状をしています。ドア・ストッパーなどに使われていますね。

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 確かにくし切りにされた食材は、くさびに見えなくもありませんが、やはり「くし切り」のほうが似つかわしい表現にも思えます。でも、”cut into combs”(くしの形に切る)などと直訳したところで、外国人の方に理解してもらうには時間がかかりそうです。

 次の動画ではライムをくし切り(くさび型切り)してます。

▽How to Cut Citrus Wedges (動画)

 「拍子木切り」は、拍子木のような角柱形にする切り方です。拍子木とは「拍子」を取るための木の音具。大相撲の力士の呼び出しや、夜回りで「戸締り用心、火の用心」と声をあげながら、カチン、カチンと打ち鳴らして歩くときに使われていますね。

 「拍子木切り」は英語では、

~ cut into long sticks (長い棒状に切る)
 ~ cut into bar rectangles (棒状の長方形に切る)

などと、表現されるようです。「棒状の長方形」と言うと、「拍子木切り」に比べてちょっと趣がなくなってしまったような気がします。素材の美味しさ自体は変わらないとは思いますが。

 「せん切り」は、

~ cut into long strips (せん切りにする)
 ~ shred (細かく切る、ちぎる、せん切りにする)

 他にはフランス語が語源ですが

~ julienne (せん切りにする)

 という表現もあります。Julienneとは 刻んだニンジンなどの野菜を肉汁で煮込んだ透明なスープのこと。無名の料理人の名前のようですが、元々は「ジュリアンのやり方で作ったスープ」という意味。その後、野菜を細く切ることを指すようになったそうです。

▽How To Julienne Vegetables(動画)

 ハーブやシソの葉などを重ねて、くるくると丸めて切る「糸切り」は、

~ chiffonade (シフォナードする)

と言います。chiffonade もフランス語が語源。chiffon(シフォン)は、元々はドレスの飾りレースのことだそうで、それが転じて絹で織られた薄い布のことを指すようになりました。軽くてふんわりしたイメージを表すそうです。

 糸のように細く切られたハーブやシソの葉も、軽くてふわふわしていますね。

 ちなみに、「シフォンケーキ」(Chiffon cake)も同じ語源。生地が薄い絹織物(シフォン)のようにきめ細かいところから名付けられたそうです。

▽How to Cut Chiffonade (動画)

 「乱切り」は、なす、にんじん、ごぼうなど、棒状のものをくるくる回しながら、不規則な形に切ることから、英語では

~ roll cut

 他には、

~ chop (適当に切る)
 ~ cut coarsely

 などと表現されています。

▽Simply Ming: Roll Cutting Technique (動画)

 最後に「かつらむき」です。

 「かつらむき」とは、大根など円筒形の材料を、皮をむく要領で薄くむいていく手法です。かつらむきしたものを丸め端から細く切り、刺身のつまを作ったりします。

 「かつらむき」の語源については諸説あるとのこと。能楽の装束の「鬘帯(かつらおび)」(髪の後ろに結んで長く垂らす帯状の布)が語源だという説や、平安から室町時代の行商人「桂女(かつらめ)」が使用した、細長い白布で頭を包んだ衣装に由来したという説、等々。

 オンライン辞書weblioには、次のように英訳されていました。

– rotary cutting (回転切削)
 – thinly slicing into a long strip (薄切りにして長尺にする)

 次の動画では、かつらむき(katsuramuki)したキュウリをジュリアン(julienne / せん切り)にする方法を英語で説明しています。

▽Cucumber Julienne in Katsuramuki style – Japanese chef skill

 料理動画を見ていたらお腹が空いてきました。夏の暑さに負けないように、美味しいものをしっかり食べて、楽しみながら料理英語を学んでみてはいかがでしょうか。

 
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