映画『In The Heat Of The Night(夜の大捜査線)』で南部アメリカ英語マンツーマンレッスン
アメリカの口語英語でよく、ain’tとうい単語を耳にします。これは、次のようなbe動詞の否定と同じ意味を表します。
Am not Are not Is not
今では全米各地で耳にするようになっていますが、もともとはその特徴的なイントネーションとあわせてアメリカ南部英語特有の表現だったそうです。
“I aint going.” ”We aint going.” ”He aint going.”
映画『In The Heat Of The Night』の中に、この表現の南部と北部の違いを感じさせる場面がありました。Virgil Tibbs(ヴァージル・ティッブス)はフィラデルフィア警察の敏腕刑事、ミシシッピー州の小さな町を通りかかったところ殺人事件に巻き込まれて行きます。現地の警察が捕まえた容疑者Harveyをほんの一瞬調べただけで、Tibbsは彼が無罪であることを見抜きます。
北部出身のTibbsと、ミシシッピーの警官の会話です。
Virgil Tibbs
He’s left-handed, isn’t he?
(彼は左利きだ。そうだろう?)
現地警官1
How do I know?
(なんで?)
Virgil Tibbs
Well, he seemed left-handed to me.
(私にはそう見えた)
現地警官2
I believe Harvey is a southpaw.
Now, ain’t he, Shagbag?
(彼はサウスポーだな。そうだう?)
現地警官3
What if he is? What’s that make him?
(だったら何だ?)
Virgil Tibbs
Innocent.
(彼は無実だ)
他にもこの映画でミシシッピーの役の人々は何度もain’tを使いますが、北部出身のTibbsは一度も使うことはありませんでした。
Bill Gillespie 警察署長
There ain’t no trains this time of mornin’.
(朝のこの時間に列車はない。)
Harvey Oberst 容疑者
Well, I ain’t got no watch, but it must have been after two, by the courthouse clock.
(時計は持っていないが、裁判所の時計で2時過ぎだった。)
Ralph Henshaw 食堂の給仕
I ain’t servin’ him!
(奴に食わせるものなど無い)
James Patterson Deloresの兄
I ain’t talkin’ about this with him in the room.
(奴がこの部屋にいるんだったら俺は話さないぞ)
この映画が発表されたのは1967年。アメリカでは公民権運動の機運が高まり、北部と南部が緊張関係にあった時代でした。
監督のNorman Jewison(ノーマン・ジュイソン)は次のように解説しています。
「1967年当時のアメリカについて話したい。その頃アメリカは公民権運動のまっただ中で、各地でデモが行われ都市部では焼き討ちが続出した。人々が大義のために死んでいった。迫害の時代に、私は素晴らしい映画を撮る機会に恵まれた。主人公は南部の町に足止めを食った黒人刑事。67年の時点では横行していた人種差別を体験する話だ。時代をとらえた企画だった。」
どんな言葉を使うのかとういことは、あなたが誰であるのかを表すものなのかもしれません。
▽In the Heat of the Night (1967) Trailer
(*)関連リンク
▽ain’t の意味は