映画『The Constant Gardener』(ナイロビの蜂)でアフリカ英語(ケニヤ)

CG4 ケニヤで慈善活動に励んでいた女性テッサ・クエイル(Tessa Quayle)は、ある事実をつかみます。製薬会社がケニアの住民を人体実験い使っている証拠です。村人は村の有力者にいわれるまま同意書に署名させられれ、すべては代理人を使っておこなわれるため、企業の名は表に出ることがないからくりがそこにはありました。彼女は秘密に深入りしすぎたために、殺されてしまいます。

 原作はイギリスの作家ジョン・ル・カレ(John le Carré)の同名小説。

 著書には次の文言が添えられています。

 
For Yvette Pierpaoli who lived and died giving a damn(存分に生き、そして死んだ、イヴェット・ピアパオリに)

 このイヴェット・ピアパオリとはどのような人なのでしょうか。ジョンは、テッサのキャラクターを作る際に、イヴェットをイメージしたと言われています。ジョンがイヴェットに出会ったのは、この作品を書く20年も前のことでした。

Yvette Pierpaoli

Yvette Pierpaoli

 イヴェットは、イタリア系フランス人、1939年にフランスの北東部にある都市メスで生まれます。10歳の時、学校の先生が授業でフランス植民地の地図を見せました。この瞬間から彼女はカンボジアに強い繋がりのようなものを感じたのだそうです。

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 彼女が25歳の時、5歳の娘エマニュエルと共に、数年分の貯金で片道航空券を買い、冒険に出ます。それは、彼女がずっと夢見ていたことでした。プノンペンに到着した時点ですでに無一文の状態でした。しかし、バイタリティあふれる彼女は、あるホテルのオーナーに、「今は宿泊料は払えないが、ビジネスを成功させて必ず返済できる」と交渉。オーナーは彼女の申し出を受け入れます。ところが、彼女が輸出入の商売を始めると、賃料の返済だけにとどまらず、ビジネスから得た大量の利益をカンボジアの貧しい人々に食料や衣料品を購入するために使うようになります。社会活動家としての彼女の人生の始まりでした。

 彼女とジョンが出会ったのは1974年、プノンペンのドイツ外交官の自宅でのことでした。ジョンは彼女のことを次のように表現しています。

 

She could tip you with a smile to melt your heart, cajole, flatter, and win you needed to be won. But it was all for a cause. And the cause, you quickly learned , was an absolutely non-negotiable,visceral requirement in her get food and money to the starving, medicines to the sick, shelter for the homeless, papers for the stateless, and, just generally, in the most secular, muscular, businesslike, down-to-earth way you can imagine, perform miracles.
彼女は笑顔と甘い言葉と褒め言葉であなたの心を溶かして、彼女が必要としているものを勝ち取ってしまうことができた。しかし、全ては大義のためでした。あなたはすぐに気がつくでしょう。その大義とは、彼女にとっては交渉不能で理屈抜きの要求であることを。飢餓で苦しむ人々に食料とお金を、病人には薬を、ホームレスには避難所を、無国籍の人々には身分証明書を与えるためのものであり、あなたも想像しうる一般的で、最も非宗教的で力強く、実際的で、地に足の着いた大義が、数々の奇跡を起こしていったのです。

『Once Again to Zelda』 (Marlene Wagman-Geller 著)より

 1999年、ジョンが『The Constant Gardener』執筆のためにケニアに到着した二日後、イヴェットの殺害を告げる電話が入ります。アルバニアでの自動車事故でした。非常に危険な雨の中の道程で、車は数100フィート下の崖に転落。アルバニアの運転手とアメリカ人二人が死亡。コソボの難民キャンプに衛星ラジオを設置に行く途中でした。

 イヴェット・ピアパオリのことを知ると、ケニアの人々を守るため危険を顧みずにどんどんと突き進んでいった映画のキャラクター、テッサ・クエイルの人物像に重なってゆくことが分かります。小説の冒頭にたった一行添えられた謝辞ですが、そのなかに作者の語りつくすことのできない思いが込められているのかもしれません。




ケニア共和国

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