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変幻自在
マイケル・ケインの英語で
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I keep saying I’m going to retire. Well I am now.

「引退すると言ってきたが、今がまさにそうだ」

現在公開中の映画「2度目のはなればなれ」(原題:The Great Escaper)で主役を務めたイギリス人の俳優、マイケル・ケイン氏が俳優業からの引退を表明しました。

2023年10月14日BBCラジオ4の「トゥデイ」に出演した際の出来事です。

※BBC Radio

 https://www.bbc.co.uk/sounds/play/p0glfdvw

マイケル・ケインの名前は知らなくとも、クリストファー・ノーラン監督のバットマン三部作で執事役を演じた俳優と言えば、印象に残っている方もいるのではないでしょうか。

ケイン氏は1933年にサウス・ロンドンで生まれました。父親はビリングスゲート(Billingsgate)市場で魚の運搬を、母親は日雇いの清掃員でした。

住まいはロンドンの最貧民区キャンバーウェル(Camberwell)にあるアパート。

部屋にバスルームはなく、トイレは部屋を出て5つ階段を降りた庭の中にありました。

父親は聡明で賢く愉快な人でした。

他方、教育を十分に受けていなかったせいで、読み書きが得意でなく、肉体労働しかできませんでした。

My father was not a chirpy Cockney sparrow.

父はコックニーとしての人生を謳歌していなかったのだ。

He was, in truth, never truly happy. …

確かに、決して幸福とは言えなかった。(中略)

I used to look at him and think: 

私は父を見てこう思ったものだ。

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Blimey, with an education, what could this man have done? 

ああ、教育を受けていたらこのひとはもっと何かできただろう。

『Blowing the Bloody Doors Off: And Other Lessons in Life 』

(翻訳本『わが人生。 名優マイケル・ケインによる最上の人生指南書』

マイケル・ケイン 著、大田黒 奉之 翻訳)より

[語註]

chirpy:チーチーさえずる、陽気な

Cockney:コックニー。ロンドンのワーキングクラスのひとたちのあいだで話される、訛りのある英語、またはそれを話す人たち

Cockney sparrow:コックニー・スパロー。イギリスの俗語。上記同様コックニーのことを指す。sparrowの本来の意味は「スズメ」。このフレーズには、コックニーたちの地元のアイデンティティと誇りが凝縮されているとのことで、しばしば遊び心や愛情を込めた口調で使われる。

blimey:ああ、くそ~、驚きや興奮を表すときに使う

「俳優になりたい」そんな夢を語ったケイン氏に対して、多くの人々はこう言ったそうです。

Who do you think you are?

(自分を何様だと思っているんだ)

※Michael Caine: Breaking The Mold
https://youtu.be/uxAHYSIoT-I?si=dvnGX0E6GVEX_Tg3

ケイン氏が幼い頃は、ワーキングクラスを扱ったイギリス映画や舞台などはありませんでした。

俳優になるためには、ミドルクラス、アッパークラスのアクセントの英語が話せる必要がありました。

ところが、1950年代末から1960年代初頭にかけて時代は一変。イギリスの若者やワーキングクラスにとって活気あふれる時代となりました。

ビートルズの登場です。

ワーキングクラス出身でリバプール訛りの4人の若者が作り出す音楽が、新しいカルチャーとして世界の注目を集めたのです。

ワーキングクラスの人々のエネルギーは音楽に留まらず、演劇、映画、ファッション、アート、文学、アートでも数々の素晴らしい作品が生まれ、その才能に世界中から熱い視線が注がれました。

俳優としてのケイン氏を世界に知らしめた映画の一つが、1966年公開の『アルフィー』 (原題:Alfie)でした。

ケイン氏が演じたのは主人公のアルフィー青年。

生意気で魅力的、いい加減だが、実はどこか孤独な遊び人であるコックニーの若者。

映画は彼の女性遍歴を描いています。

この映画でケイン氏は初めてアカデミー賞にノミネートされ、彼が出演した映画で初めてアメリカで公開されることになりました。

This required me to redo 124 lines of dialogue.

ちなみに、この(アメリカ版の)映画では124個のセリフをやり直しさせられました。

The Americans would never have understood my Cockney accent, a point that my American co-star Shelley Winters confirmed to me.

アメリカ人には私のコックニー訛りが聞き取れないと、アメリカ人の共演者であるシェリー・ウィンタースから指摘された。

She told me she hadn’t understood a word I’d said during the shoot and had resorted to watching my lips to know when to come in.)

彼女は撮影中の私の台詞が聞き取れなかったので、私の唇の動きでタイミングをつかんだそうだ。

『Blowing the Bloody Doors Off: And Other Lessons in Life 』

(翻訳本『わが人生。 名優マイケル・ケインによる最上の人生指南書』

マイケル・ケイン 著、大田黒 奉之 翻訳)より

[語註]

redo:やり直す

resorted to:~に頼った 

ケイン氏はコックニー訛りの英語だけでなく、例えば、助演男優賞を受賞した『ハンナとその姉妹』(原題:Hannah and Her Sisters)、『サイダーハウス・ルール』(原題:The Cider House Rules)ではアメリカ英語を、『ズール戦争』(Zulu)ではアッパークラスの英語を話しています。

ケイン氏の映画でいろいろな英語を楽しむことができます。

12歳の時に、BBCのニュースリーダーの話し方をそっくりまねることを決意したETC英会話のリチャード先生。

家族は皆地元の方言を話していました。

「イギリスでは話し方が自分の処遇に影響する」「訛りのないもっと綺麗な話し方を学ぶことができれば、自分にとってよりよい状況になる」という理由からです。

イギリスの階級と英語についてご興味のある方は、ぜひリチャード先生の下記のインタビューもご一読ください。

※BBCNewsリーダーの英語を学んだ理由~リチャード先生(四国) ETCマンツーマン英会話

https://etc-eikaiwa.com/former-teacher/post_118.html

◎参考図書

『Blowing the Bloody Doors Off: And Other Lessons in Life 』

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