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「日本が私を
『もっとマリ人』にする」
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日本で暮らす外国人がこの国のことを語るとき、その客観的な視点が本質 を鋭く言い当ていて、ハッとさせらることがあります。

マリ共和国出身で、京都精華大学の学長であるウスビ・サコ氏 (Oussouby Sacko)は、朝日新聞の取材の中で、コロナ禍において日本人が すべきことを問われ、次のように答えています。

「(日本人は)『自分ではない誰かがしてくれる』気持ちが強い。サービ スが整いすぎているのが日本の弱さで、知恵や能力を使う機会がなく、自ら 考えて動くのが苦手で他責傾向がある。

ただ、わかっているのは、この問題 は誰かが解決してくれるものではないということです」

サコ氏は続けます。

「私たちはこの先もウイルスと生きていかなければならず、それに対応す る強い社会基盤をいかに持つかが重要です。

この機会に、他人がやってくれ ないことを前提に個人の能力を上げ、自分自身や地域でやる覚悟を決めて、 人と連帯感を持つしかないと気づけば変わっていくでしょう」

※アフリカ出身・京都精華大サコ学長 コロナ問題でわかった「日本人のホンネ」
(AERA.dot、2020年5月14日)

サコ氏は1966年生まれ。

2013年に京都精華大学の学部長に、そして2018年 春には同大学の大学長に就任しました。そもそも、アフリカ人であるサコ氏 が、どのようにして日本で大学長になることができたのでしょうか。

そこには、克服しなければならない数々の障害がありました。

しかし、サ コ氏にはある鉄則があり、それを貫くことが自身の支えになったと言います。

それは、「外国人として勝負はしない」「日本人と同じレベルで競争する」 というものだったそうです。

サコ氏は1991年に来日し、京都大学大学院に入学。1999年までの8年間日 本語を勉強しました。

最初は、サコ氏ら留学生に均等な機会など与えられなかったそうです。

し かし、サコ氏はそれを意識しないよう努めました。

また、クラスにはアフリカ人だけでなく、中国人や韓国人の留学生もおり、 彼らはみな日本人と距離を置いているように見えたとのことです。

日本人は これを見て、「彼らは『他の人』なのだ」、と思っていたそうです。

「自分はそういう外国人と思われないようにしよう、と決めたのです。

だ から私は日本語だけで会話しました。研究室での研究も、講義やレポートも、 すべて日本語でやりました」と、サコ氏は当時を振り返ります。

この方法で、サコ氏は、自ら日本と世界との懸け橋としての地位を確立し たと言います。

※アフリカ人が日本で「大学長」になれた理由
 「外国人」として勝負はしなかった
(東洋経済、2018年5月16日)

興味深いことは、来日して30年近くになるサコ氏ですが、彼が母国マリの 文化をより深く知るための機会を、日本が与えてくれているということです。

マリ共和国はかつてフランス領でした。

サコ氏は、「フランスにいるとき にはこのような感覚を持ったことはありません。皆フランス語を話します。

だから、自分がアフリカ人だということを、意識することさえありません」 と言います。

でも、日本は全く逆だそうです。自分がマリ人であることを、常に思い起 こされるとのこと。それはこんな理由からでした。

After two words, “ah, what do you come from?” “do you like Japan?” “how long have you been here?” “what is the difference between in your country and in Japan?”, push me to go to a certain Marian place I didn’t know. Every time they are asking so much about Djenne or Tombouctou.

(二言目にはこう聞かれます。「何をするために来日したのですか?」「日 本は好きですか?」「日本にはどれくらい長くいるのですか?」「あなたの 国と日本で何が違うのですか?」、そして、私が知らないマリのいくつかの 場所に、行くよう強いるんです。ジェンネ旧市街やトゥンブクトゥ遺跡につ いて、いつもたくさん質問をしてきます)

 観光地だけでなく、音楽についても同じだと、サコ氏は言います。

Because when I was in Mari, I wasn’t listening to some music.

But they push me to understand Tomani Jabathi or whatever.

So they make me more marian

(私がマリにいるとき、聞いていなかった音楽があります。

日本の皆さんは、 私にトゥマニ・ジャバテ(マリのコラ奏者)など、いくつかの音楽を理解す ることを強烈に薦めるのです。

日本の人々は私を、よりマリ人にしてくれます)

今ではサコ氏はマリに帰るたびに、「まずは日本人が薦めてくれたあの村 を訪ねてみよう」、と旅行をするそうです。日本はサコ氏を自国の文化に触 れるより多くの機会を作ってくれているのだそうです。

※Japanophiles: Oussouby Sacko
(NHK World – Japan)

日本に住む私たちが海外に行き、異国の人々と触れ合う時にも、これと似 たようなな体験をしているのではないでしょうか。

異国に触れることが、母 国のことを知るきっかけになっている。

一日も早く、また海外を自由に旅できる日が戻りますように。

◎参照リンク
※ウスビ・サコ(wikipedia)

 
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