“うやむや”は英語で?
「首相はうやむやな返事をするにとどめた」
さて、これは英語では何と言ったらいいのでしょう? 日米ハーフのナオミ先生(荻窪)に質問をしてみました。
「”うやむや”って言いにくいですね」と、まずはこの日本語に対する率直な感想を述べたナオミ先生。
そして、「これは『大人的ないい加減さ』と言いうか、大人の都合で敢えてyes か no かをあいまいにしているわけですね。
だって、子どもは「うやむや」にはしないですから」と、この言葉の持つ本質的な意味を理解された上で、次のように訳しました。
The Prime Minister only gave us a vague reply.
“vague”は、「漠然とした」、「あいまいな」、「はっきりしない」、「紛らわしい」、「どうともとれる」、「はっきり言わないで」などという意味で、ちょうど日本語の「うやむや」にあたります。
では、次の日本語は英語では何と言うのでしょうか?
「彼はうやむな態度をとる」
ナオミ先生は、「英語はyesかNoかをはっきり言う言語。それに対して、”うやむや”はとても日本語的な表現で、そのまま英語に訳すのはとても難しい」
と前置きをした上で、「でも、ちょっと頭を切り替えて、否定形にするという方法もあります」とアドバイスをくれ、次のように訳しました。
His behavior is not understandable.
ただし、これをネイティブスピーカーに言うと、おそらく”What do youmean?”と聞き返されるでしょうとのこと。
「なぜ、”うやむや”だと感じたのかを、もっと具体的に伝える必要があります」とのことで、こんな例文も教えてくれました。
I can’t understand how he feels.
I can’t understand his gestures.
けれども、これらの英訳文からは、肝心の日本語の「うやむや」に該当する言葉はなくなってしまいました。
そもそも「うやむや」の語源とはどのようようなものなのでしょうか?
「うやむや」を漢字で書くと「有耶無耶」。「耶」は疑問の意を表す助詞。
つまり「有や(あるのか?)、無や(ないのか?)」を問うても、はっきりしない状態、というのが元々の意味だったそうです。
そして、とても興味深いのが、羽洲浜街道の三崎峠に今も残る「うやむや伝説」です。
昔々、鳥海山に「手長足長」という鬼がいて、三崎峠を行く旅人を長い手足で捕まえては喰っていたとのこと。
その峠に神の使いである三本足のカラスが表れ、鬼がいるときは「ウヤウヤ」と鳴き、いないときには「ムヤムヤ」と鳴いて、旅人に危険を知らせてくれたそうです。
でも、「ウヤウヤ」と「ムヤムヤ」は音が似ています。正しく聞き取れなかった旅人は、悲しいかな、手長足長鬼の餌食になってしまったそうです。
ナオミ先生の「”うやむや”って言いにくいですね」という感想も、これまたこの言葉の本質を直感的にうまく捉えていたのですね。
「首相のうやむやな返事」をうやむやなままにしておくと、鬼が出てきて命を危険にさらすかもしれない?! そんな教訓を「うやむや伝説」は教えて
くれているのでしょうか?!
ならば、もっとしっかりと耳を傾けて、注意深くよく聞いてみようと思います。
(※)関連リンク
▽ナオミ先生(荻窪)インタビュー
▽マンツーマン英会話ワンポイント・レッスン~うやむやは英語で?
(※)参考図書
▽『地団駄は島根で踏め 行って・見て・触れる(語原の旅)』(わぐりたかし著)
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