和製英語の違和感は”Go To トラベル”だけじゃない

 7月22日から日本政府が始めた「Go To トラベル事業」。開始時期の前倒しに始まり、キャンセル料の負担の問題など、政府の対応が二転三転し、また、県境をまたいで人々が広範囲に移動することから、コロナ感染症の拡大にもつながっている可能性も否定できず、連日様々な話題で報道を賑わせています。

 一方、コロナ禍で大幅な売上減が続く、航空・鉄道・旅行会社などにとって、同事業がなんらかのプラスになるのではとの期待の声も聞こえますが、残念ながら出足はまだまだ低調のようです。

 さらに、この”go to travel”という文言が、和製英語だとの違和感を持ち、その文法の誤りなどが指摘されているのを、ご覧になった方も多いのではないでしょうか。

 英語学が専門の神崎高明・名誉教授(関西学院大学)は「英文法的に完全に誤りとまでは言えない」としながらも、「travel自体に『行く』という要素が含まれているため、意味が重なる”go”と一緒に使われることはない、と解説しています。

 ”go”を使う場合は、”go on a trip”という表現がより自然とのこと。また、主語がなく先頭に動詞の原形がきているため、「トラベル(という場所)に行け」などと命令されているようにも聞こえてしまう、などという違和感を神崎氏は示しています。

※GoToトラベルは文法ミス?「日本語の一員といえる」
(2020年7月23日、朝日新聞)

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 英語を学ぶ私たちにとって、この和製英語は、実は日本語を英訳する以上に、厄介な存在なのかもしれません。正しい英語だと思い込んで使ってしまい、ネイティブスピーカーには全く通じなかった、という経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

 また、和製英語の中には、日本語を話す人々にしか理解できない、独特のニュアンスが含まれている場合もあります。いざそれをネイティブスピーカーに理解してもらえるように、別の英語で言い換えようとすると、これがなかなか難しかったりします。

 厄介なことに、普段何気なく使っている日本語の中に、この和製英語が想像以上に多数存在します。例えば、つぎの日本文は最近のニュースやコラムなどから拾ったものですが、【】内はすべて和製英語です。そのまま英語会話の中で使用しても、ネイティブスピーカーには伝わりにくい、もしくは全く伝わらない可能性があります。

・【ナチュラルメイク】の正しいやり方
・営業時間は午前11時から、7時半【オーダーストップ】、8時閉店
・茅ヶ崎のドレスコード、アガる【ビーチサンダル】で海街を自由に楽しもう!
・沖縄県内6市役所で「出張【ハローワーク】」
・ダルビッシュ今季初勝利の【ウイニングボール】を聖子夫人へプレゼント

  【ナチュラルメイク】とは、素顔に近く自然に見せる化粧法のこと。英語では”natural-look makeup(make-up)”というそうです。全く”natural”自然のまま、素顔のままではなく、ナチュラルなように見せるので ”natural-look”。”make”だけでは伝わりませんのでmakeupにします。

 【ナチュラルメイク】をネイティブとの会話でそのまま使うと、化粧のこととは伝わらず、「自然が作り上げたもの」とは何のことなのだろう、と悩ませることになりそうです。

 また、化粧をしていないのであれば、”She wears no makeup. Se has no makeup on”、薄化粧であれば、”She wears light makeup. Her makeup is minimal”というそうです。逆に厚化粧だった場合は、”She wears thick / heavy makeup”と表現します。

 【オーダーストップ】はレストラン等で、閉店前の注文受付の〆切時刻のこと。英語では閉店前にできる最後の注文のことを”last order”と言います。

 英語で【オーダーストップ】と言ってもまず伝わらないとのこと。「ラストオードは何時ですか」は、”What time is the last order?”と言い、「何かラストオーダーはございませんか?」は、”Would you like toplace any last orders?”となります。

 海水浴場などでは大活躍する【ビーチサンダル】。鼻緒のような留めひものあるゴムかビニール製の履物を英語では”flipflps”、“thongs”と言います。

 他方、英語の”sandals”は、暖かい季節に履く軽い履物で、足全体を覆わず甲や踵の部分が透かし模様や、革やスエード製などのひもやベルト状になっているもの。街用で、砂浜用のものではありません。また、両足に履くので、いずれも複数形になるところもポイントです。

 【ハローワーク】は「公共職業安定所」のこと。略して「職安」との呼ばれていたものを、明るいいイメージになるよう1990年に労働省が公募し、採用された名称です。公共機関としての英語の名称は”Public Employment Security Office (PESO)”。他には”the Department of Human Resources
Offices”(米)、”a job center”(英)などの言い方もあるそうです。

 ネイティブスピーカーに【ハローワーク】と言っても、職業斡旋機関のこととは伝わりません。「こんにちは仕事」とはどういういう仕事なのか、「こんにちは(ハロー)」 と人に言う仕事なのかと、悩ませてしまうかもしれません。

 【ウイニングボール】は勝利を決めた時のボールで、主に野球で使われます。似たような言葉で、テニスの【ウイニングショット】、ゴルフの【ウイングパット】、さらにはトラック競技で優勝者がトラックを一周する【ウイニングラン】(正しくは”victory lap”、”lap of honor”)などがありますが、どれもみな和製英語だそうです。

 これら一連の和製英語はネイティブにはまず伝わらないとのこと。では、【ウイニングボール】を英語ではなんというのかというと、残念ながら、この言葉にぴったりとあう英語はないそうです。

 投球や打撃など選手の優れた技術ではなく、「勝利を決めてくれたボール」のようにモノに着目して、その物体の中に何か特別な力でもあるかのように重宝するのは、日本の独特の文化なのかもしれません。

 「落とし穴」や「ひっかけ問題」のように、日本語のいたるとこに多数存在する和製英語ですが、ネイティブスピーカーとの会話の中で、伝わらないことをにひとつづつ体験してゆくのは、楽しい勉強法に一つです。「英語のようにも聞こえるけど、どこかちょっと変?」というご自身の違和感にも注目してみるのもよいかもしれません。

◎参考書籍
『和製英語事典』
亀田尚己、青柳由紀江、 J.M.クリスチャンセン (著)

 
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