マンツーマン英会話ワンポイント・レッスン~イギリス人作家レイ・デイトンの英語アクセントの描写について教えてください
『言葉にこだわるイギリス社会』 (ジョン・ハニー著/高橋作太郎・野村恵造訳)の中に次のような説明がありました。
レイ・デイトンの作品の中にはアクセントに関して具体的にどのような記述があるのでしょうか。
では、『ロンドン・マッチ』(レン・デントン著/田中融二訳)を例に、登場人物のアクセントについて描写している部分をいくつか抜き出してみましょう。これらの表現がからそれぞれのアクセントに対してイギリス人がどのようなイメージを持っているのかがわかるのではないでしょうか。
【ロンドン訛り】
ベルナー・フォルクマンは生まれついてのベルリンっ子だった。わたしは子供のときにこの土地の学校にかよい、わたしのドイツ語は彼のと同じくらい本物だったが、私はイギリス人なので、ベルナーは自分のドイツ語がなにかの魔法のよううなものの作用によって、私のそれより本物だという自負を押し付けようとしているのだった。わたしのほうでも、完全なロンドンなまりの英語をしゃべるどんなドイツ人に対しても、それと同じ感じをいだくにちがいないので、そのことについては異議は申し立てなかった。(11p)
【上流階級のアクセント】
「あなたが責任者でいらっしゃるの?」と彼女はきいた。ナイツブリッジのブティックの女店員が使うような、誇張された上流階級のアクセントだった。「わたしにどういう疑いがかけられているのか、知りたいわ。申し上げておきますけど、法律で保証されている自分の権利は承知していますからね。わたしは逮捕されたんですの?」(17p)
【アメリカ訛り】
「よく来たな、バーニー」彼はわたしの手をはなしながらいった。「この前あんたが来たときは別の家だったな。ほら、あのパン屋の二階のアパート……」まるで昨日やってきたばかりのように、彼のしゃべり方にはアメリカなまりが強かった。(106p)
【ロンドン訛り】
ジョージ・コシンスキは36歳だが、たいていの人は彼をそれより5つから10も年長だと思うだろう。小男だが大きな鼻をして大きな口ひげを生やし、そのどちらも作り物めいた不似合いな印象を与えた。同じことは彼の強いロンドンなまりについてもいえ、会うたびにわたしはあらためてそれに慣れる努力をしなければならなかった。(146p)
【アメリカ南部訛り】
「ハーリー! これじゃ完全に遅れちゃうわよ」彼女の声はチョコレートを食べながら『風とともに去りぬ』のテレビドラマを見る女性のそれを思わせて、マグノリアの花のにおいのように甘ったるかった。(156p)
【ロンドン訛り】
「彼はぼくを嫌っているんですよ。彼はぼくが自分の娘の亭主だってことが、知人お耳にはいることに堪えられないんだ。ぼくが身内だってことが恥ずかしいんだよ。彼は社会主義者だと自称しているくせに、ぼくのしゃべり方や教育や家系が上流階級のそれじゃないことを恥じているんだ。彼は本当にぼくを嫌っているですよ」(158p)
【ウェールズ訛り】
彼の顔はひどく白くて丸く、小さな目にはライス・プディングにはめ込まれた二個のスグリの実のようだった。言葉には歌うような力強いウェールズなまりがあり、彼はいつもそうなのか、それとも出世した地方出身者であることを目立たせようとしているのか、判断に迷わされた。(174p)
【ウェールズ訛り】
「ひとつふたつ見落としている点がありますよ、ブレット」いつにもましてウェールズなまりを強く響かせて、彼はいった。(176p)
【アメリカ訛り】
「これは僕の発案だ。シュティンネスはあまり信用していないようだが、僕のアメリカなまりは正体を隠すのに十分に有効だと思う。そしてそうした場合の通常の保証としてあらゆる条件をそなえたシュティンネスがそばにいれば、彼等はまさかわたしがイギリスの保安機関の手先だとは疑うまい。」(272p)
【ウェールズ訛り】
気にさわるのは、たんにファーストネームを使うということだけではなく、いかにも無造作な、過度になれなれしいしゃべり方もだった。ウェールズなまりは詩を朗読するのには向いているかもしれないが、もっとも友好的な挨拶をさえ、あざけりやからかいのように聞こえさせる危険があった。(273p)
【イギリス上流階級のアクセント】
「あなたさまにご面会の紳士がお見えです」と彼は英語でいった。ふだんの英語のまずさにひきかえ、それはアクセントも抑揚も完璧で、おそらく彼はそれをアメリカかイギリスの映画に出てくる執事からでも学びとったものと思われた。(423p)
【関連図書】
・『言葉にこだわるイギリス社会』 (ジョン・ハニー著/高橋作太郎・野村恵造訳)
・『ロンドン・マッチ』(レン・デントン著/田中融二訳)