今だからこそ「学ぶ」大切さ~ETC英会話代表 福本哲也インタビュー

・ 2011年3月17日
・ 話し手 福本哲也(ETC英会話 代表)
・ 聞き手 青樹洋文

英語が少しでも話せる私たちにできること
──東北関東大地震の後、多くの外国人の方が帰国したとのニュースが報じられていました。ETC英会話の先生はいかがでしょうか。

転勤等で一時的に来日されている方であればすぐ帰国できるのですが、ETC英会話の先生は、パーマネント・レジデントとして日本に住んでいる方のほうが多いのです。ですから、一口に帰国すると言っても、日本に生活の基盤がある先生にとってはなかなか難しいことです。

──日本に住む私たちと状況が変わらないのですね。

そうなんです。家族を連れて帰国して、向こうでまた家を借りて、仕事も探さなければならない。帰国するといっても簡単な事ではないのです。

ETCマンツーマン英会話 福本哲也また、来日して日が浅い先生などは日本の地理をまだよく知らないため、東京から200キロ以上離れた東北の震災であっても、必要以上に怖がってしまっている方もいらっしゃいますね。外国から日本を見た場合、地図の上でも凄く小さい島国ですから。

そのような方には、具体的な例をあげて詳しく説明してあげる必要があります。「東北地方と東京は、あなたの国で言うと何処の都市から何処の都市と同じ位離れている場所にあります。むこうの都市で何かがあっても、そこから200キロ以上離れたこちらの都市では、それほど影響が無いのと同じです。ですから、そこまで心配をする必要がないのですよ」というような説明をして、安心してもらいます。

日本に住む外国人は、日本語がわからないことで、この時期とても不便を感じている方が多いと思うのです。日本語が理解できて少しでも英語を話せる人たちが、彼らの役に立てることが、この時期たくさんあると思うのです。

──今回の震災に対して、日本は海外からたくさんの支援をいただいていますね。

百数十カ国から支援されているそうです。世界の国数は、日本を除くと192カ国ですから、これは世界の殆どの国から支援されていることになりますね。日本にはこんなにも支援をしていただける仲の良い国があるんだということは何にも代え難くありがたいことです。

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言葉の背景のあるものを理解する
──先日、クロアチアで反政府のデモを行っていた人たちが、日本大使館の前を通りかかったときに、全員が立ち止まって黙祷したそうです。海外でもたくさんの人たちが、日本を元気付けようとしてくれているのを知るだけでも、こちらの気持ちが変わってきます。

このようなニュースを被災地にも届けたいですね。被災地からのニュースは大切ですが何か元気づけられるものも大事だと思います。

──日本のニュースだけでなく、海外からの情報を得ることも必要ですね。

特に海外からの情報に限らずそれが正しい情報なのかどうかをちゃんと見極められるようになることが大切です。色々なものを見て、それを自分自身で判断できるようにならなければいけません。例えば、独裁政権の国からの情報は、その政権に都合のよい誤った情報を流している可能性もあるわけですから。日本語や英語のニュースだからといってもそれをそのまま鵜呑みにしてはいけないと思います。

──情報が正しいかどうかを見極めるには、それを判断する知識や経験がないとできないですね。

海外旅行をすると、外国の人から日本のことを聞かれることがよくあります。でも、日本人である自分が日本のことを説明できないことに気づいたりします。また逆に、外国の人の方が日本のことを知っていてびっくりすることもあります。英語が喋れるだけではだめで、自分の国のことをもっと説明できるような知識が必要なのだということに気がつきます。

──大切なことですね。

やはり、英語は単にコミュニケーションの道具ですから。いくら英語が喋れても、いくら発音が上手くなっても、その道具を使う人間に知識や実体験がないと、中身の無い人だと思われてしまいます。

──外国語の勉強は、短にその言葉自体を学べば良いのではないということですね。その言葉を生んだ背景にあるもの、つまり文化や歴史、社会環境などを学ばなければいけない。

たとえば、フィリピンでは英語を公用語としていますので、英語を話せる方が多いし、知識レベルも高い。フィリピンの大学生などは、日本の大学生よりよっぽど勉強していますからね。(笑) でも、欧米の英語圏の文化と違うところがありますので、それを前提として勉強をしないといけないですね。その人たちの英語だけが普通の英語だと思ってしまうと、ちょっと違います。

──欧米人でもそうですよね。その人が今までどういうところに住んでどんな仕事をしてきて、どんな経験を積んできたか、また何を学んできたか。そのすべてが言葉に表れて来るわけですから。

たとえば、イギリスの階級社会についてイギリス人に質問をしたことがあります。「階級っていったい何が違うんだ?」って。すると、「喋る言葉が違う。それが階級なのだ」って。アッパークラスの人は「そういう言葉は使わない。それは労働者階級の言葉だ」って言う人もいるし、労働者階級の人は、「俺たちが使わないようなそんな言葉を使って、上品ぶってるんじゃないよ」、みたいな。(笑)

同じ国の中でも、色々なレベルや人種等でもその言葉を使う人々の背景にある文化が違ってきます。「良い悪い」ではなくて「違い」がある。それを知らずに、その言葉を使ってしまうと、おかしな意味になってしまうこともあります。

海外留学生が減っている今だからこそ
──ETC英会話の先生も本当に多彩ですね。大手企業のマネジメントを勤めたバリバリのビジネスマンもいれば、詩人もいる。読書家の方もいるし、芸術に造詣が深い方もいる。

ETCマンツーマン英会話代表 福本哲也先生のインタビューして初めて知ることもあります。チャールズ先生も読書家で詩人だということはお聞きしていたのですが、枕草子や紫式部まで読んでいることを知って驚きました。 “time has passed and age has come my way. But I need only look at this flower for all my cares to fade away” この英文を先生からお聞きして、後から実はこれが枕草子の「年經れば齡は老いぬしかはあれど花をし見れは物おもひもなし」の引用だとういことを知ったりしてびっくりしつつ知らなかった自分が恥ずかしかったです。(笑)

──イギリス人の先生に、枕草子を教えていただいたわけですね。(笑) ETC英会話の先生は、日本の生活が長い方が多いので、私たちのことをある程度理解してくれた上で英語を教えてくれているところがありますよね。

日本の生活様式や日本人の習慣など、殆どわかっている先生が多いので、先生の方がそれを酌んでくんでくれてしまって。それは、良い面でもあり、悪い面でもります。パトリシア先生がおっしゃっていました。実際に海外に行って、日本のことを知らない人たちとコミュニケーションを取る。すると、こんなにコミュニケーションギャップが生まれるのだということを、身を持って体験できる。そして、また日本に戻ってきて勉強する。これが外国語会話の上達には最も効果的だと。

でも、今、海外に留学したいという日本人が、他の国と比べて最も少なくなって来ているそうですね。外国に出て外国の文化を肌で学ぶということは、日本の中にいて外国語を学ぶのとは、また違う有意義な経験になると思うのですが。

──海外に留学する人が少ないというのは、逆にチャンスでもありますね。

そういうことですね。イギリスがそうなんです。世界中どこでも英語が通じますから、外国語を学ぼうと言う人が少なくなってしまっている。このため、国内の通訳のうち英国人の比率が非常に下がってきてしまっているのです。アメリカでも同じです。これは他国の文化を学ぶ姿勢としても捉えられるので重要視して外国語教育にまた力を入れているそうです。

日本が復興するために必要なこと
──3月11日、ニューヨーク・タイムズに「Sympathy for Japan, and Admiration (日本へのいたわりと称賛)」というコラムが掲載されました。筆者は、阪神大震災の際、同紙東京支局長だったニコラス・クリストフさん。日本に住む人々の忍耐力、冷静さ、そして秩序を尊ぶ姿勢をたたえ、今後の復興への期待を語ってくれている、勇気付けられる内容です。そのコラムを読んでわかったことなのですが、「我慢」いう日本語は、英語には無い言葉なのだそうです。敢えて英語に訳すならば、”toughing it out” (苦境に耐える) となるそうです。

日本では昔から、我慢することが美徳であるという考え方があり、色紙に書くことばにも「忍耐」が人気があるようですが、アメリカ人にはわかりにくいことなのかもしれませんね。「津波」とうい日本語がそのまま英語になっているように、「我慢」という日本語も、そのまま輸入して英語として使うようになるかもしれないですね。最近では「もったいない」がかなり国際的に有名になりましたから。

ETCマンツーマン英会話 福本哲也/代表取締役世界的ベストセラーとなった『帝国以後』の著者で、エマニエル・トッドという人口学者でもある歴史学者が、『世界の多様性』という著書でこんなことを言っています。国民の識字率が70%を超えると、それが国家の変革に結びつくのだそうです。たとえば、ロシア革命が起きた時には、たった30年ほどの短い間に、識字率(著書では新兵-=若い成人男性)が25%ほどから70%まで一気に上がった時期だったそうです。現在チュニジア等で起きている変革も、識字率が70%位に上がった時期と重なっているそうです。明治時代に日本が急激に近代化したのも、同じ様に識字率が上がった時期だと思います。
災難を我慢することは美徳ですが、正していくべきことを主張して新しいものを創造していくことも文化や国の別なく重要なことだと思います。

日本は、これから長い時間をかけて復興して行かなければなりません。そのためにも、英語に限らず外国の言葉や文化を学ぶ重要性は、ますます高まって行くと思います。

[了]

 
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