News137 モバイル版
…━━━━━★
長崎原爆を作った
核施設の解体作業に
まだあと50年
★━━━━━…
“Should we have pride in killing innocent people?”
(罪のない人たちを殺すことに、誇りを感じるべきでしょうか?)
福岡県大牟田市の高校3年生、古賀野々華(ののか)さんは、2019年5月に 米ワシントン州にある留学先のリッチランド・ハイスクールの高校の生徒向 け動画「AtomicTV」に出演して、こう問いかけました。
※Atomic Town 5-30-19
同高校は第2次大戦中に原爆を開発した「マンハッタン計画」の拠点の一つ で、プルトニウムが作られたハンフォード核施設に隣接しています。
長崎に 投下されたプルトニウム原爆はここで作られました。
校舎の壁や体育館の床など、学校の至る所に描かれた同校のシンボルマー クは、リッチランドの頭文字「R」の後ろに、原爆を投下した時に生じるキノ コ雲を形取ったものでした。
リッチランドの町の発展は、ハンフォード核施 設と共にありました。近郊のハンバーガーショップ、ボーリング場等にも同 様のシンボルマークが掲げられています。
同校の生徒達はこのキノコ雲を誇 らしく思っているとも語ります。
他方、長崎の原爆による死者は73,884人、負傷者は74,909人。
67の町が消 滅したとされています。
また広島の原爆では約14万人が死亡したと推計され ています。
原爆投下による死傷者によって立ち上がるキノコ雲を、学校のマスコット とすることを問題視する声は、古賀さんが声を上げる前にも何度となくあっ たようです。
同校の卒業生でワシントンポストのライターであるサマンサ・フロスト (Samantha Frost)さんは、2017年ネット・メディアの「the odyssey online」 で次のように指摘し、同校のマスコットの変更を訴えました。
It is estimated that 200,000 Japanese people died when the atomic bombs exploded, and thousands more died later from radiation exposure. Over 200,000 men, women and children. People who may not have agreed with their government. People with hopes, dreams and aspirations were lost in mere moments. Why do we celebrate this?
(原爆の爆破によって20万人の日本人が死亡し、その後数千人以上が被爆によっ て亡くなったとされています。
彼らは自国の政府の行いには賛同していなかっ たかもしれない。
夢と希望を抱いていたた人々が一瞬にして失われてしまっ た。
このことをなぜ私たちは称賛するのでしょうか?)
※It’s Time To Change The Richland High School Bomber Mascot It has got to go.(May 22, 2017)
しかし、彼女の意見に賛同する意見はほとんどなく、大半の意見は次のよ うなものだったと言います。
Many pointed out the Japanese were unlikely to surrender if the U.S. didn’t drop both of the atomic bombs.
(もし米国が原爆を広島と長崎に投下しなければ、日本は降伏することはな かったであろうと、多くの人々は指摘した)
※Richland High School’s bomber mascot and mushroom cloud logo in the news again (MAY 27, 2017)
プルトニウム原爆が作られたハンフォード核施設は、リッチランド高校か ら距離にして北西に僅か33キロ余り。
広さは広大でおよそ1518平方キロメー トル。
東京都の面積の7割にも匹敵します。
同施設は第二次大戦が終了してもその役目を終えることが出来ず、その後 に始まった冷戦の最中に拡張が進められました。
1964年から1970年にかけて、 徐々に活動を停止したとのことです。
冷戦が終結後、アメリカ国内のあちこちにあるかつての核関連施設を解体 ・除染するために、米国政府は100億ドル以上を投入してきました。
現存する 施設はハンフォード核施設を含め17箇所。
解体・除染作業の結果、数百人の 従業員が健康被害を受け、今後数千人に上るかもしれないとの見方もありま す。
ハンフォード核施設の解体作業には、あと50年必要で、費用は今後1070億 ドルは掛かるであろううと言われています。
2017年12月、ハンフォード核施設でプルトニウムやアメリシウム等の放射 性物質が飛散するという事故が発生しました。
現在までに42名の作業員が被 ばくが伝えられています。
その事故から現在まで、解体作業は停止したまま になっています。
※アメリカの核施設「ハンフォード・サイト」で連続するプルトニウム被曝事故 (2018年9月23日)
※Here’s What Happened When The Government Lost Control Of The Biggest Nuclear Cleanup In The US
大戦の終了から74年が経ちました、しかしその後片付けには、勝戦国にお いても後50年の時間を必要としています。
戦争へと進む権力者の愚かさと、 その国の下で潰されてゆく弱き人々の不条理を感じずにはいられません。
トルコとの国境に近いシリア北部のクルド人街コバニ。
戦闘真っ只中の 2014年からの3年間を追ったドキュメンタリー映画『ラジオ・コバニ』。
シリ ア人女性の語る「戦争に勝者などいません。
どちらも敗者です」という言葉 が強い説得力を持って響きます。