母の日(Mother’s Day)っていつから始まったの?
5月の第二日曜日は母の日(Mother’s Day)です。母の日が祝われるようになっ たのは今から100年程前のこと。アメリカ・ウェストバージニア州の教師だっ たアンナ・ジャービズさん(Anna Jarvis:1864年-1948年)が創始者だとい言 われています。
アンナさんの母、アン・ジャービスさん(Ann Jarvis :1832年-1905年)は、 敬虔なクリスチャンであるとともに社会活動家で、地域の医療・衛生環境の 改善に努めたまとめ役でもありました。
アンさんは「Mothers Day Work Club」というボランティア団体を組織し、 1861年に南北戦争が起こった際には、北軍も南軍も関係なく、全ての兵士た ちに助けの手を差し出しました。
1905年5月9日にアンさんが他界。11人の兄弟姉妹の9番目だった娘のアンナ さんは、悲しみの底に突き落とされます。そして、自分が母親にしてやれな かったことをあれこれ考えては、自分を責めるようになったそうです。
2年間思い悩んだあげく、1907年母の命日だった3日後の第二日曜日に、ア ンナさんは友人たちを自宅に招きます。そこで、「毎年国中で母の日を祝う」 というアイディアを披露し、皆から大賛同を受けました。
翌1908年の初春、アンナさんは母親が20年間教師を務めたウェストバージ ニア州グラフトンのアンドリュー・メソジスト日曜学校の校長に手紙を書き、 このアイディアを伝えます。果たして1908年5月10日の日曜日、407人の子ど もとその母親が出席し、第一回の母の日の礼拝が行われました。
アンナさん自身はこの礼拝には参加しなかったようですが、祝電とアンナ さんは出席した母親と子どものそれぞれために、自分の母親の好きだった白 いカーネーションを500本送ったそうです。
母の日を決めて祝おうというアンナさんのアイディアはすぐに世論の賛成 を得るようになります。さらに、アンナさんは、議員、政府高官、市長、各 新聞社の編集長、牧師、企業家などに対して手紙攻勢を展開。その甲斐あっ てか、1914年5月8日、母の日はウッドロウ・ウィルソン大統領(Woodrow Wilson)によって5月の第二日曜日と正式に決定されました。
こうして母の日の創始者となったアンナさんですが、私生活では恋に破れ、 結婚もせず、子どももいませんでした。
母の日はその後、宗教的な意味合いが薄れ、この日に送られるお菓子やカー ド、そしてカーネーションを販売促進しようとする商業主義が強くなります。 白いカーネーションが高騰するようになると、今度は赤いカーネーションが 薦められるようになり、なんと「赤は健在の母に、白は他界した母に」など といった、後付の理由が花屋業界によってされるようになります。
当初の思いとは乖離してい行く状況を憂いたアンナさんは、母の日で利益 を得ようとする会社を相手取って訴訟を起こしますが敗訴。アンナさんは貯 えを使い果たし、家を手放し、世話をしていた盲目の妹に先立たれてします。 1944年に生活保護を受けるようになり、晩年は友人たちのカンパで私設療養 所で生活。病気で、耳も聞こえず、目もほとんど見えず、母の日を作って多 くの母親に幸福をもたらしたアンナさんは、1948年に84歳で亡くなります。
さて、南北戦争中には、南北問わず両兵士の医療に貢献したアンナさんの 母親ですが、戦後は南北のわだかまりを解くためにコンサートを開催したり、 教会の学校で子供たちに勉強を教え続けたりしていたそうです。
この話を聞き、第二次世界大戦の際に、日米問わず硫黄島で戦った結婚さ えしていない10代の少年たちの姿を記した、著作『Flags Of Our Fathers』( 「父親たちの星条旗」ジェイムズ・ブラッドリー著)を思い出しました。
同書はこんな一節で始まります。
The mothers of the fighting countries would agree:
Stop this killing now. Stop it now.
- YOSHIKUNI TAKI
国と国の間のことは、母親たちが協議をしたほうがいい。
戦う国々の母親たちは、この殺戮はもうやめよう、
こんなことはもうやめよう、という点で同意するだろう。
- ヨシクニ・タキ
命を得ることの尊さ、儚さ、痛み、幸福を自らの身体に刻んだ母親たちに、 男女を問わず、親である人もそうでない人も、全ての人が、思いを重ねる日 となりますように。
今年(2018年)の母の日は5月13日です。
(*)参考書籍
『Extraordinary Origins of Everyday Things』Charles Panati著
同書の翻訳本は3部に分かれています。「母の日」の記述があるのは下記の 書籍です。
『いわゆる“起源”について (はじまりコレクション) 』 チャールズ パナティ (著)、バベル・インターナショナル (翻訳)