映画『The Last King Of Scotland』(ラストキング・オブ・スコットランド)でアフリカ英語(ウガンダ)

Last_king_of_scotland_uk 1970年代にウガンダで独裁政治を敷いたイディ・アミン。1971年に彼が大統領に就任してから独裁者へと変貌して行く姿を、主治医となったスコットランド人青年ニコラス・ギャリガンの目を通して描いた作品です。

 イディ・アミンはウガンダ軍参謀総長だった1971年1月に、当時の大統領だったオボテがシンガポールに外遊中に軍事クーデターで権力を掌握してしまいます。そして、そのわずか数週間後には暴力的な方法によって、敵対する勢力の排除が始まります。政敵が収監されている刑務所の爆破、不忠義を理由に彼自身の政権の大臣たちを処刑、ウガンダ国内の商業取引の大部分を担っていた3万人を超えるアジア系住民の国外追放、そして自国民30万人の大虐殺を行いました。

 イディ・アミンがクーデターを成功させた背景にはイギリスやアメリカなどの西側諸国からの支援があったからでした。しかし、イディ・アミンは植民地時代から続くイギリスの支配的な態度を面白く思わず、イギリスに対する反抗的な言動を示します。

 ギャリガンがイディ・アミンに「イギリス人か?(You are British?)」とたずねられて、「いや、スコットランド人です(I’m Scottish.)」と訂正するシーン。イギリス人を嫌うギャリガンのスコットランド人としての強い自我意識が感じられます。そして、その彼の態度がアミンに好かれるきっかけとなります。

Who are you?
何者だ?

Nicholas G… I’m Dr Nicholas Garrigan.
医師のニコラス・ギャリガンです。

I work at the medical compound in Mogambo. I’m a doctor.
ムガンボの診療所で働いている医者です。

You are British?
イギリス人か?

I’m Scottish. I’m Scottish. Scottish.
いえスコットランド人です。スコットランド人。

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Scottish? Why didn’t you say so?
スコットランド人?なぜ言わん?

I fought with the Scots against the Mau Mau. Great soldiers. Very brave.
一緒にマウマウと戦った。立派な兵士たちだ。勇敢だよ。

And good people, completely.
いい連中だ。本当に。

Let me tell you, if I could be anything instead of a Ugandan, I would be a Scot.
もし私がウガンダ人を別にしてなんにでもなれるならスコットランド人になる。

 作品のタイトル”The Last King Of Scotland”は、イディ・アミンが彼自身をそう呼んでいたからでした。原作『The Last King Of Scotland』(「スコットランドの黒い王様」武田将明訳)にも、次の記述がありました。

The World Service reported,inits usual po-faced way, that he had sent a message to the Queen, with copies to the UN Secretary-General Doctor Kurt Waldheim, Soviet Premier Brezhnev and Mao Tse-Tung:“Unless the Scots achieve their independence peacefully,” it read, “they will take up arms and fight the English until they regain their freedom.
Many of the Scottish people already consider me last King of the Scots.

BBCが例の取り澄ました調子で伝えたところでは、彼は女王陛下に文章を贈り、その写しを国連の事務総長クルド・ヴァルトハイム博士、ソ連の首相ブレジネフ、さらに毛沢東に送ったというのである。その文章は次のように書かれていた。「スコットランド人の独立が平和裡に実現しないかぎり、彼らは武器を取り、自由をふたたび手にするまでイギリス人と戦うであろう。スコットランド人の人民の多くはすでに私がスコットランド最後の王であると考えている。」

 『The Last King Of Scotland』(「スコットランドの黒い王様」ジャイルズ・フォーデン著/武田将明訳)より

 映画に登場するはイディ・アミンは、ウィリアム・シェークスピアのマクベス王にも例えられています。実在のスコットランド王マクベス(在位1040年–1057年)をモデルにして書かれた戯曲です。「勇猛果敢だが小心な一面もある将軍マクベスが妻と謀って主君を暗殺し王位に就くが、内面・外面の重圧に耐えきれず錯乱して暴政を行い、貴族や王子らの復讐に倒れる。」まさに、イディ・アミンも同様の人生をたどります。為政者の側近の人々への不信感から生まれる感じる孤独と、いつか彼らから裏切られるのではないかとうい不安と恐怖。

 イディ・アミンの非人道的な行動を止める方法はなかったのでしょうか。また、今後イディ・アミンのような指導者が誕生しないと言い切れるのでしょうか。嫌悪感をもって不支持する人々だけでなく、熱狂的に支持される人々によってもこのような為政者は孤独感に苛まれてしまうのでしょう。国民は自らの命を守るためにも、為政者の行動を常に注意深く見つめ、孤独にしてはいけないのかもしれません。

▼The Last King Of Scotland trailer

▼The Most Evil Men in History Idi Amin Documentary


ウガンダ共和国

ウガンダ共和国

(*)関連リンク
The Last King of Scotland, Idi Amin, and the United Nations

d0060382_2381115『スコットランドの黒い王様』

 
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