イチローのスピーチで楽しむ英語実況 -「満塁ホームラン」がなぜ「サラミサンド」に?

Thank you Marilyn for representing the legacy of your husband, our legendary broadcaster, Dave Niehaus. My, oh my!

「マリリンさん、あなたの夫である我々の伝説の実況アナウンサー、デイブ・ニーハウスの遺志を継いでいただき、ありがとうございます。マイ・オー・マイ!」

 シアトル・マリナーズ球団会長付特別補佐兼インストラクターのイチローさんが、同球団殿堂入りのセレモニーで15分を超える英語のスピーチを行いました。イチローさんは10人目の殿堂入りとなりました。

 イチローさんの元チームメイトとともに、セレモニーに参列していた女性マリリンさん。彼女はメジャーリーグベースボール(MLB)の中継実況アナウンサー、故デイブ・ニーハウス(Dave Niehaus)さんの奥様です。

 「My, oh my!」は、ニーハウスさんの決め台詞でした。好プレーや大記録などに対する驚きの表現だそうです。ニーハウスさんの奥様の前で、イチローさんがスピーチの中でそのものまねを披露したのです。

 ニーハウスさんは2000年に同球団殿堂入りのメンバーの一人となりました。2008年には野球放送への大きな貢献に対して毎年贈られるフォード・C・フリック賞を受賞。1977年にマリナーズの専属アナウンサーとなり、2010年にそのキャリアを終えるまでの約30年間、全5,385試合のうちの5,284試合の実況を担当。「マリナーズの声」(the Voice of the Mariners)と呼ばれました。

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 ニーハウスさんはワシントン州盲人協会から表彰されたこともあります。「彼の目と描写によって、目の不自由な人も試合を見ることができるようになった」と評価されたそうです。

 野球ファンにとってニーハウスさんの実況はとてもなじみが深く、その声は感動的なシーンとともに記憶に刻まれているのかもしれません。

 イチローさんが258本目のヒットを打ち、84年間破られることのなかったレギュラーシーズン最多安打記録を樹立した2004年。ニーハウスさんは次のような実況で、イチローさんを称えました。

He’s the new all-time Hit King in Major League history, number 2-5-8! My, oh my!

メジャーリーグ史上、新たな歴代ヒット王の誕生だ。258本。マイ・オー・マイ!

 2001年4月のボストン戦。ライト前のヒットを、イチローさんが三塁にノーバウンドで返球して、走者をアウトにした場面の実況です。イチローさんの剛腕から放たれたレーザー銃のような球威を、あの有名な映画で例えました。

They’ve got him nailed at third base on a tremendous throw by Ichiro!
I’m here to tell you that Ichiro threw something out of Star Wars down there at third base!
He fired a shot about three feet off the ground all the way on the fly to David Bell and Terrence Long was D.O.A.!

イチローの驚異的な送球で三塁で釘付けにされた!
イチローがスターウォーズの武器でも使ったかのような投球を三塁上で披露したことをお伝えします。
イチローは地面から3フィート(約1m)の高さでノーバウンドでデビッド・ベル(三塁手)に向けて返球、テレンス・ロング(走者)は三塁到着時に即アウトでした。

(*) D.O.A.:《dead on arrival》到着時死亡。
走者が三塁に着いたときには、すでにイチローが投げた球が返っており、タッチアウトになったことの例え

 ニーハウスさんは、満塁ホームラン(grand slam)を、発音が似ているからなのかサラミ(salami)と呼んでいたとのこと。「さて、サラミに合うのは何だろう」と思いついたのは、ライ麦パンとマスタード。そんなひらめきから生まれたのが、こんな決め台詞です。

Get out the rye bread and mustard grandma! It’s grand-salami time!

おばあちゃん、ライ麦パンとマスタードを出して!
グランド・サラミ(満塁ホームラン)の時間だ! 

 この意味不明な実況は、野球ファンの間で大きな反響を呼んだそうです。ファンがサラミを釣竿に取り付け、ゆっくりと放送席まで垂らしたり。サラミのサンドイッチやマスタードの瓶を差し入れする人もいたとのこと。シアトルのソーセージ会社、Oberto Sausage Companyから、ニーハウスさんに送られたサラミ・ソーセージは長さ1.5メートル近くもあったそうです。

 野球に熱狂する姿を目にするにつけ、アメリカ人にとって野球は単なるスポーツではなく、それ以上の何かであるのを感じます。もちろん日本でも野球は人気スポーツの一つですが、それとはまた違う何かを感じます。「アメリカ人にとって野球は特別なもの」と言う人もいます。

 自らも少年野球のコーチを務めているミッチェル先生(西葛西)が、アメリカ人と野球について解説してくれました。こちらも合わせてお読みください。

(*)参照サイト

 
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