スコットランド英語に挑戦~『Parliamo Glasgow』で笑いながらマンツーマン英会話(1)
何を話しているのか、英語が全くわからない。ホームパーティで初めてスコットランド人にお会いしたとき、そんな体験をしました。
英会話学校の先生の話す英語は理解できていたのに、スコットランド人が話す英語は、どこか別の国の言葉のようでした。未知の言葉の中に、聞きなれた英単語のフレーズが一瞬表れたかと思うと、また意味不明の言葉の中に埋もれて行くような感覚です。何故でしょうか?
「英語は一つではありません。幾通りもの種類の英語があるのです」と、教えてくれたのはETCマンツーマン英会話のチャールズ先生です。
そこで、色々な種類の英語を聞いてみることで、理解できる英語の幅を広げて行くことにしましょう。
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■スコットランド英語とは
スコットランドの言語は、多民族の言語が出会い複雑に混ざり合うという歴史を繰り返しています。よって、明確に分類することは難しいですが、あえて主要な言語を整理すると、次の3つになるようです。
◎「スコッツ語/スコットランド語(Scots)」
→ ローランド地方と島嶼部、北アイルランドの一部
◎「スコットランド・ゲール語(Scottish Gaelic)」
→ ハイランドおよび島嶼部
◎「スコットランド英語(Scottish English)」
→ スコットランド全域
1603年、エリザベス女王が後継ぎのないまま亡くなったために、同じ血筋をもつスコットランド王ジェイムズ六世がイングランドの王を兼ねることになり、ジェイムズ一世となりました。(同君連合/Union of the Crowns)
ジェイムズはロンドンに移り住み、20年も里帰りをしなかったそうです。スコットランドにいた頃と比べると、宮廷の資産は潤沢で、反駁する大貴族に悩まされることなく、居心地がよかったのかもしれません。それもあってか積極的に両国の同化政策を推進します。
特に重要なのは言語の同化です。ジェイムズはゲール語圏が野蛮の温床であると見なし、英語ができないと学校教育も受けられなくしてしまいます。よって、この時代よりゲール語は衰退を始めて行きます。同時にジェイムズ1世自ら先頭に立って聖書の英訳事業を薦めます。その成果である『欽定訳聖書(The Authorized Version of the Bible)(1611年)』の完成は、長期的に英語世界の拡大に計り知れない役割を果たすこととなります。1707年の合邦(議会合同)以降、ローランド地方を中心としたイングランド化が進み、スコッツ語の使用領域も狭められて行きます。
スコットランド英語(Scottish English)は、スコッツ語とイングランドの標準英語が出会うことで生まれます。この際、たくさんのスコッツ語がスコットランド語に転換されてゆきますが、双方の発音が混ざり合い、場合によってはスコッツ語の発音の方が採用されたり、語彙も英語に変更されて行く過程で、しばしば多くの間違いが発生したようです。
では、ここで「グラスゴー方言」を聞いてみましょう。1960年代にテレビ番組のコメディー・シリーズで評判になった『Parliamo Glasgow』です。スコットランドのコメディアン俳優、Stanley Baxter(スタンリー・バクスター)さんが、「グラスゴー方言」を「スコットランド英語」で楽しく解説しています。
いかがでしたか?ひとつ取り上げてみましょう。
Izziafiz Wurk?
この意味は、
Is he off his work? (彼は仕事がお休みなのですか?)
この”Is he off his”を、一つの単語のように早く発音します。
isheoffhis
発音は、
iz-ee-aff-iz
グラスゴー方言では、このようにいくつかの文節をひとかたまりにして発音することよくあるようです。映像では、このひとかたまりにしたものを接頭辞(prefix)にして、質問をする時に使用すると解説しています。
こんな例文もありました。
Izziafiz meat?
= Is he off his meat?
= Has he lost his appetite? (彼は食欲がなくなってしまったのですか?)
Izziafiz boozn?
= Is he off his boozing?
= Does he reasonably keep sober? (彼は無理なく禁酒を続けていますか?)
Izziafiz Bliddichump?
= Is he off his bloody chump? (彼は馬鹿を止めたのか?)
『Parliamo Glasgow』のグラスゴー方言のスペリングは、その発音の特徴を知るために役にたちそうです。
※参考図書、論文
◎グラスゴー方言 - その音韻・つずり字法・語彙 -(杉本豊久)
◎『Accents of English 2』(J.C.WELLS 著)
◎『スコットランド 歴史を歩く』 (高橋哲雄 著)
※関連ブログ
スコットランド訛り 児島由紀子の「ロンドン通信」
Mary, Queen of Scots – 気楽な英語ブログ@千葉
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