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“Before I am a athlete, I am a black woman.”

(私はアスリートである前に、黒人女性です)

テニスの大坂なおみ選手はこのようにツイートし、2020年8月27日に予定されていたウエスタン・アンド・サザン・オープン準決勝への出場を辞退する意向を示しました。

大坂選手はハイチ共和国出身の父と日本人の母の間に産まれています。

“And as a black woman I feel as though there are much more important matters at hand that need immediate attention, rather than watching me play tennis.“

(私がテニスをするのを見ているよりも、目の前にもっと重要な問題があると、ひとりの黒人女性として思うのです)

※2020年8月23日、大坂なおみ選手ツイート
https://twitter.com/naomiosaka/status/1298785716487548928

 大坂選手は辞退の理由を、次のように説明しています。

“I don’t expect anything drastic to happen with me not playing, but if I can get a conversation started in a majority white sport I consider that a step in the right direction. “

((自分が出場しないことで)白人が多数を占めるスポーツ界で、(人種差別について)会話を始めるきっかけを作ることができれば、正しい方向への一歩だと思う)

“Watching the continued genocide of Black people at the hand of the police is honestly making me sick to my stomach.

I’m exhausted of having a new hashtag pop up every few days and I’m extremely tired of having this same conversation over and over again.

When will it ever be enough?#JacobBlake, #BreonnaTaylor, #Elijah Mcclain, #GeorgeFloyd “

(警察の手で黒人の虐殺が続いているのを見ていると、正直胃の具合が悪くなってきます。

数日も経たないうちに新しいハッシュタグが立ち上がるに私は疲れ切っています。

繰り返し同じ会話をすることに本当にうんざりしています。

いつになったら、これで十分となるのでしょう?

#ジェイコブ・ブレーク、 #ブリアーナ・テイラー、 #エライジャ・マクレーン、 #ジョージ・フロイド)

※2020年8月23日、大坂なおみ選手ツイート
https://twitter.com/naomiosaka/status/1298785716487548928

大坂選手の辞退表明後、USTA(米国テニス協会)、ATP(男子プロテニス協会)、WTA(女子テニス協会)が共同で大会の一時中断を発表。

この対応を受け、大坂選手は一転、WTA、USTAと協議を行い、準決勝出場を決めました。

ことの発端は8月23日に米国ウィスコンシン州で起きた事件でした。

黒人男性のジェイコブ・ブレーク(Jacob Blake)さんが車内に入ろうとした際、警官2人に背後から7発銃撃しました。

ブレークさんは一命は取り留めたものの、腎臓や肝臓を損傷した上に脊髄を貫通する重傷。

胃にも穴が開き、結腸と小腸の摘出を余儀なくされたとのことです。

ブレークさん一家の代理人を務める弁護士によると、ブレークさんは女性同士のけんかを仲裁しようとしていたのだといいます。

他方、警察はブレークさんを銃撃するに至った経緯をいまだ公表していないとのこと。

また、警察組合は、銃撃事件に関するほとんどの情報は、ブレイクの弁護士からの情報を含め、完全に不正確で純粋な作り話であると述べているそうです。

※ジェイコブ・ブレークへの銃撃事件 (wikipedia)
https://bit.ly/3hb3uvm

●7つの試合、7枚のマスク、7人の名前

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ウエスタン・アンド・サザン・オープンの後、8月31日に開幕したのが「全米オープン」(US Open)。

大坂選手は見事2018年以来2度目の優勝を果たしました。

1次ラウンド、2次ラウンド、3次ラウンド、ベスト16、準々決勝、準決勝、決勝と7つの試合を勝ち進んだ大坂選手。

黒人襲撃事件への抗議の意を込め、7つの試合で着用した7枚マスクには、1試合ごとに1人、過去の痛ましい事件で亡くなった犠牲者の名前が記されていました。

各々の方がどのような亡くなり方をしたのか、ここで詳しく記すことは誌面の都合できませんが、ウイキペディアの関連リンクを貼っておきました。

ご一読いただければと思います。

1 Breonna Taylor(当時26)(ブリアーナ・テイラー)
2 Elijah McClain(当時23)(エライジャ・マクレーン)]
3 Ahmaud Arbery(当時25)(アマード・オーブリー)
4 Trayvon Martin(当時17)(トレイボン・マーティン)
5 George Floyd(当時46)(ジョージ・フロイド)
6 Philando Castile(当時32)(フィランド・カスティール)
7 Tamir Rice(当時12)(タミール・ライス)

※ブリオナ・テイラーへの銃撃事件
https://bit.ly/3jr2btY

※Death of Elijah McClain(英文)
https://en.wikipedia.org/wiki/Death_of_Elijah_McClain

※Killing of Ahmaud Arbery(英文)
https://en.wikipedia.org/wiki/Killing_of_Ahmaud_Arbery

※Trayvon Martin(英文)
https://en.wikipedia.org/wiki/Trayvon_Martin

※ジョージ・フロイドの死
https://bit.ly/34rePmj

※Shooting of Philando Castile(英文)
https://en.wikipedia.org/wiki/Shooting_of_Philando_Castile

※Shooting of Tamir Rice(英文)
https://en.wikipedia.org/wiki/Shooting_of_Tamir_Rice

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https://www.deepl.com/Translator

優勝インタビューで「(この7枚のマスクで)どんなメッセージを伝えたかったか?」と問われると、大坂選手は「どんなメッセージを受け取りましたか?」と逆質問。

次のように心中を語りました。

インタビューアー:
“You said from the beginning you had seven matches, seven masks, seven names. What was the message you wanted to send, Naomi?”

(あなたは当初から、7つの試合、7枚のマスク、7人の名前があると言っていました。

どんなメッセージを送りたかったのでしょう)

大坂選手:
“What was the message that you got was more the question.”

(皆がどんなメッセージを受け取ったのか、ということの方が重要でした)

“I feel like the point is to make people start talking.“

(人々が話を始めることがポイントだと感じています)

※Naomi Osaka | US Open 2020 Winner’s Speech
https://youtu.be/IELytkCsqW0?t=12

大坂選手のメッセージは、日本に住む私たちの身近にある人種差別に、あらためて目を向けるきっかけとなりそうです。

●スポーツ選手に貼られた奇妙なレッテル

アメリカの雑誌「TIME」は9月23日、2020年のTIME 100(世界で最も影響力のある100人)を発表。

大坂選手は2年連続で選ばれました。

TIME 100に因んでおおなわれた「TIME」誌の動画インタビュー。

最初に大坂選手はこのツイートについて問われました。

I hate when random people say athletes shouldn’t get involved with politics and just entertain.

Firstly, this is a human rights issue.

Secondly, what gives you more right to speak than me?

By that logic if you work at IKEA you are only allowed to talk about the “GRONLID” ?

(スポーツ選手は政治の話題に触れるな、ただ人を楽しませるべきだという意見が私は嫌いです。

まず、この話題は人権問題です。

次に、なぜ私にはあなたのように政治的な発言をする権利がないのですか?

その考えだと、IKEAで働いている人は『グローンリード (IKEAブランドのソファ)』の話題しかしてはならないということになりますよね)

※2020年6月22日、大坂なおみ選手ツイート
https://twitter.com/naomiosaka/status/1268590075786326017

「スポーツ選手はスポーツだけに固執してればよいと言われるのは侮辱的だ」とも発言している大坂選手に、インタビューアがその理由を質すと、次のように答えました。

“Everyone has a vote and a say, I think it’s really weird that athletes get told to just stick to sports,”

(中略) “You would never go up to a barber and say just stick to cutting hair.

It’s a weird stigma(*) that gets attached and I don’t even know where it comes from.”

(皆に選挙権がありますし、発言の権利があります。

スポーツ選手はただスポーツに専念してればよいと言われることは本当におかしなことだと思います。

理髪店にいって髪を切る事しか話さないなんてことはないでしょう。

これはとても変なレッテル貼りで、どこから来た考え方なのかさえわかりませんけれど)

※TIME 100 TALKS | Why Naomi Osaka Says It’s Insulting to Tell
Athletes to ‘Just Stick to Sports
https://time.com/5851730/naomi-osaka-speaks-out-sports-justice/

(*)stigma:汚名。烙印(らくいん)。

ある属性の集団に対してネガティブなレッテル(負のレッテル)を貼ること。

あまり良くないイメージでその属性を見ること。

●日本の人々が学ぶきっかけに

TIMEのインタビューアーは、日本の芸人が大坂選手に必要なものを聞かれて「漂白剤。あの人日焼けしすぎやろ!」と発言したことにも触れました。

その上で、「社会的公正というような問題に、日本は向き合う準備ができていると思うか」と問い質しました。

大坂選手の答えは次のようなものでした。

I mean Japan is a really forward-thinking country. I think everyone
just needs to learn what’s acceptable and what’s not. Sometimes I
think it’s not really racism it’s just ignorance. But definitely I
feel like there’s always going to be like the trap that everyone
wants to go in order to learn and be a better person.

(日本は本当に前向きな考えを持つ国だと思います。

ただ、何が許され、何が許されないの皆が学ぶ必要があるのだと思います。

時々、これは本当は人種差別ではなく、単なる無知だと思うこともあります。

ただ、皆が学びより良い人間になるためのきっかけ(罠)は常にあるのだと思います)

※大坂なおみへの差別ネタ、若手芸人Aマッソが謝罪「笑いと履き違えた最低な発言だった」。
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_5d8ab7a4e4b08f48f4ac5fe5

●対比されたスポンサー広告

大坂選手のスポンサー企業の広告内容の違いにも注目が集まっています。

大坂選手が全米オープンで2度目の優勝を遂げた後の9月13日に、ナイキジャパンがツイッターで発信した広告は、大坂選手の横顔の写真の上に「この勝利はじぶんのため この闘いはみんなのため」との文字が入ったものでした。

「この闘い」が意味するものは、テニスの試合の事ではなく、差別との闘いであることが読み取れます。

(2020年9月13日、ナイキジャパン)
https://twitter.com/nikejapan/status/1304909292928073728

他方、カップヌードルの公式アカウントが全米オープン開始日の9月1日にツイートした広告には、テニスウエアを着た大坂選手の写真の上に「原宿に、行きたい。なおみ。」と書かれていました。

(2020年9月1日、カップヌードル)
https://twitter.com/cupnoodle_jp/status/1300553999888691201

大坂選手の闘う姿に触れ、日本で暮らす私たちは何を学ぶべきなのか、企業人は何を伝えるべきなのか、あらためて考える良い機会が訪れているのかもしれません。

 
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