プレゼンのコツ

 「プレゼンのスタートでは聴衆をドキッとさせて、心をつかめ」。

 なぜなら聴衆が最も集中して聴いているのは、スピーチの最初の10秒から20秒間だからそうです。(『TEDトーク世界最高のプレゼン術』より)

 TEDのプレゼンで、Will Stephen氏もこんな言葉で聴衆を驚かせます。

I have absolutely nothing to say whatsoever.
And yet, through my manner of speaking, I will make it seem like I do.

私は話すテーマなど全く何もありません。
しかし、話し方一つで、あたかも何かのテーマについてプレゼンしているかのように見せることができます。

“How to sound smart in your TEDx Talk by Will Stephen”より

 つまり、話に内容など無くても、いわゆる「良いプレゼンのハウツー」に忠実にしたがって話を進めれば、話に内容があるように見えてしまうと言うのです。書籍『TEDトーク世界最高のプレゼン術』に紹介されている「コツ」に照らし合わせて、Stephen氏のプレゼンを聴いてみましょう。

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◆コツ1-オープニングではあなたのパーソナルヒストリーを語る
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ハウツー通り、Stephen氏も最初に”内容のない”個人的体験断を語り始めます。

「ここで、私の個人的エピソードを語っていると思ってください。会場の雰囲気を和らげ、私を少し身近に感じてもらえるような失敗談です」と言うだけで、実際の失敗談については何も話そうとしません。そして、

「はい、ここで皆さんは”えー?!”と言ってください。」

「えー?!」(会場)

「本当です。実際に起こった話なんです」

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◆コツ2-手を効果的に使ったジェスチャーはストーリをサポートする
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Stephen氏も積極的に手を使います。しかし話しには内容はありません。

「いろんな手振りをします。右手を動かし、左手を動かし、眼鏡を直したりします」などと言いながら、手を動かしているだけなのです。

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◆コツ3-大事なポイントを話すときは、一箇所に留まり足先は聴衆に向ける
 話を止めて間を置き、場所を移動。移動をやめたらまた話し始める
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Stephen氏の歩き方は、まさにその通りになっています。

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◆コツ4-聴衆に質問をぶつけ、スピーチを会話に変える
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Stephen氏も聴衆に質問します。しかし、意味の無い質問です。

「この中で今までに質問をされたことがある方は手を上げてください」

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◆コツ5-スライドは画像を主体にシンプルに
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印象的な写真の下に”innovation”、”synergy”などの言葉を挿入したスライドを示しながら、Stephen氏の内容の無い話は続きます。

「出来合いの写真素材に関連がありそうなキーワードをあわせてみました。
なにか有意義なプレゼンをしているようにも見えますが、実際私はその意味の半分も理解していません」

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◆コツ6-スピーチの締めくくりで終わりが近いことを明確に知らせる
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内容の無い話も終わりに近づきました。相変わらず何かについて話をしているわけではありませんが、Stephen氏の話しの間の取り方、スピードの変化、抑揚などは素晴らしいものがあります。

「ここで話すスピードを遅くし、雰囲気を変えます。あたかも私の話が何かドラマチックな結末に向かおうとしているかのように。」しかし、そんな結末も当然ありません。

 Stephen氏のプレゼンは次の言葉で締めくくられます。

I was nothing and it’s still nothing, think about that.
(話の最初は何もありませんでした。今もありません。それを考えて欲しい)

 5分間の何も”内容の無い”話、しかしそこには何かがありました。それは、内容の無い話でも、話の本質的なメッセージ以外の部分、つまり、話し方やプレゼンのテクニック等に惑わされて、あたかも何か有意義な話を聞いたような気分になってしまう、と言う気づきでした。

 ルビが振られた原稿を棒読みするだけの国会答弁などに慣れてしまった日本人は、変化に富んだメリハリのあるプレゼンに出会うと、それだけで感動してしまうのかもしれません。

 でも、私たちにとって、プレゼンのハウツーを習得する以上に大切なことは、あなたのメッセージをどうしたら相手に効果的に伝えることができるのか、そのことを学ぶことだと思います。

 次のレッスンでは、Stephen氏の動画を見ながら、先生とディスカッションされてみてはいかがでしょうか。

(※)参考図書 
 『TEDトーク世界最高のプレゼン術』(ジェレミー・ドノバン)
   
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